糖尿病講座

経口糖尿病薬

食事療法、運動療法だけでは血糖コントロールが不十分なときのみに用います。安易に薬に頼るのは危険です。また、食事療法、運動療法が出来ていない場合は薬の効果も得られないことが多くかえって肥満を増長する場合もあります。
現在よく用いられている薬は大きく分けて6種類あります。
・インスリン分泌刺激薬(SU剤)
・ビグアナイド薬(BG薬)
・αグルコシダーゼ阻害薬(αGI薬)
・インスリン感受性改善薬(TZ薬)
・速効型インスリン分泌刺激薬(NAT薬)
・SGLT2阻害薬
・DPP4阻害薬

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1)食物中の糖質は小腸でブドウ糖に分解されてから体内(=血液中)に吸収されます
αグルコシダーゼ阻害剤
作用:糖質をブドウ糖に分解する酵素の働きを抑え、腸内での消化吸収を遅らせ、食後の高血糖を改善する薬です。
2)肝臓は血液中を運ばれてきたブドウ糖を肝臓内に蓄えたり、血液中に放出したりして血糖値を調節します。
ビグアナイド
作用:肝臓が血液中にブドウ糖を放出するのを抑えます。
3)すい臓から血糖値に従いインスリンが分泌され、ブドウ糖が体内(筋肉など)でエネルギーとして利用されるのを助けます
SU剤
作用:すい臓からのインスリン分泌を刺激します。
速効型インスリン分泌促進剤
作用:SU剤と同様ですが、素早く効果が発揮され、速やかに消失しますので食後の高血糖を改善できます
4)ブドウ糖は血流にのり全身に送られ筋肉などに取り込まれエネルギーとして利用されます。
インスリン抵抗性改善剤
作用:筋肉細胞などでインスリンの効果を高め、効率良くブドウ糖が細胞内に取り込まれるようにします。また脂肪細胞に働きインスリン抵抗性を改善するアデポネクチンを増やします。
5)食べ物が小腸内に入ってくると小腸からインクレチンというホルモン(GLP−1やGIP)が分泌され膵臓のインスリン分泌を増強させます。 これらのインクレチンはDPP4という酵素によりすぐに壊されてしまいます。
DPP4阻害薬
作用;インクレチンの分解を抑えインスリン分泌を増強します。
SGLT2阻害薬
作用;腎でのブドウ糖の再吸収を阻害することで、尿中にブドウ糖を排泄し食後血糖の上昇を抑える作用があります。

血糖自己測定機器

自分で血糖を測定する器械です。現在、インスリン治療中の方以外は健康保険の適応外です。
ランセットというバネ式の針で指先を穿刺し、一滴の血液で血糖値を5秒から20秒で測定できます。
数社からあ発売されていますが、いずれも機械本体が10000〜13000円、毎回の血糖測定用のチップは、1枚100、針は10円ほどです。いろいろありますが、測定方法が電極式のグルテスト、グルコカードが血液必要量も少なく測定ミスも少ないようです。以下に代表例を示します
ロシュ、サンワ、テルモ

新しい血糖測定器

CGMS:24〜48時間の連続血糖測定

万歩計

最近は単に歩数をカウントするだけでなく、消費カロリーを計算し記録し、パソコンにデータを送り1ヶ月間の運動パターンをグラフで表すもの、ゲーム感覚で東海道53次や日本を歩いたりするもの、たまごっちのように歩くことでペットを育てるものなどいろいろと出てます。

テルモ
食品関連についてはこちらで紹介しています。

旅行時の一般的注意事項

  • 糖尿病手帳を忘れずに
  • インスリンまたは経口薬を使用中の人は角砂糖かペットシュガーを持ち歩くようにしましょう。(グルコバイまたはベイスンを服用している方は専用のブドウ糖がベターです
  • 具合が悪くなったときは、早めに家族や訪問先、又は車中などで、周囲の人に話して近くの医療機関でみてもらうようにしましょう。
  • 家族に行く先を必ず告げて外出するようにしましょう。
  • 渋滞などで食事時間が遅れることがあります。いつでも補食できるようにクラッカーや乾パンなどを携行しましょう。

海外旅行

糖尿病患者さんにとって旅行の時のコントロールをどうするか?けっこうみなさんお迷いではないでしょうか?
特に海外旅行の時は時差の問題もあり大変です。旅行の時はこうすればよいという決まったルールはなくケースバイケースです(特にインスリン治療中や経口剤服用中の方)。ここでは一般的なヒントをお話しします。実際には主治医の先生と相談して下さい。

海外旅行 1)食べ過ぎに注意

毎日が外食になります。また、和食と違い脂肪過多やカロリーオーバーになる傾向にありますので要注意。(ハワイなどではフルーツにも)、観光で動き回るからその分食べれるのでは思いがちですがバスでの移動などで意外につかれても運動量は増えていないことも多いようです。

海外旅行 2)靴擦れなど足の状態に気をつけて

慣れない靴、新しい靴で歩き回ると靴擦れができ思わぬ炎症を起こします。特に日頃からしびれや冷感を感じている方は、毎晩、足の色やたこや靴擦れができていないかチェックをしてください。旅行には、はき慣れた余裕のある靴でいきましょう。

海外旅行 3)予備のインスリンや飲み薬を

旅行には予備のインスリンや薬を持っていきましょう  荷物の紛失(これはよくあります、以前、DR MOGがアメリカに行った際、トランクだけカナダにいっていしまい手元に戻ったのは3日目でした)、トランクの中と手荷物のどちらにもインスリンや薬をいれておいたほうが無難です。

海外旅行 4)診断書

昔と違い税関でインスリン注射液などがひっかかることはないでしょうが、できれば主治医の先生に糖尿病について英語で一筆もらっておきたいものです。(現在使用中の薬剤の種類や量など) 

海外旅行 5)旅行中のインスリンや飲み薬の使い方

海外旅行の場合は地域により時差の関係で昼と夜が逆転しますが、基本的には機内食から食事に合わせてインスリンまたは経口剤を使用して下さい。
αGI薬、インスリン感受性改善薬、DPP-4阻害薬などをお使いのかたは問題ありませんが、グリミクロン、オイグルコン、ダオニールなどのインスリン分泌刺激薬やインスリン注射をされているかたは体内時計と現地時間のずれを生じることからすこし工夫が必要でしょう。
人間の体内リズムでは朝方にインスリン拮抗ホルモン(インスリン作用を現弱させる副腎ホリモンや成長ホルモン)が多く放出されインスリンの必要量が増加しています。朝ごはんの量はけっして多くないのに朝に多くのインスリンを打たなければ行けないのはこのことによります。このリズムが現地に慣れるのには少し時間がかかります。その間、思わぬ高血糖や低血糖が起こる可能性がありますので低血糖用の砂糖などを忘れないようにしてください。
オーストラリアに行かれる人
時差は1時間程度などで問題ありません。いつもと同じように
東アジア諸国に行かれる人
時差は1時間から3時間程度などで問題ありません。いつもと同じように
北アメリカに行かれる人
モデル:インスリン1日2回注射の場合 (サマータイム)

日本時間 西海岸 インスリン量
夕方:関空出発 16:00 0:00
機内食(夕) 18:00 2:00 いつもの夕食前の量
機内食(朝) 2:00 10:00 いつもの夕食前の量
到着 3:00 11:00
昼食 5:00 13:00
夕食 11:00 19:00 いつもの夕食前の量
朝食 0:00 8:00 いつもの朝食前の量

インスリンでも一日4回注射の方は、そのまま食事にあわせて超速効型を注射、持効型は24Hごとに皮下注射しましょう。

シックディとは?

糖尿病患者さんの場合は、日頃の風邪、下痢、腹痛などちょっとした病気も油断禁物です。特にインスリン治療や飲み薬を飲んでおられる場合は急激にコントロールが悪化したり、場合によっては昏睡に陥ったりすることがあります。
そうならないようにする工夫が「シックデイルール」です。
なぜ、ちょっとした病気で血糖コントロールが乱れるのでしょうか? それには次のような理由があります。
1)病気のときにはストレスホルモン(副腎ホルモンやアドレナリン)がたくさんでます。 これらのストレスホルモンはインスリンの働きを抑え血糖をあげる作用があります
2)下痢や発熱があると脱水になり易く血液が濃縮されます。血液が濃縮されるとその結果、血糖値もあがります。
以上のように、食べれなくても血糖が上がる場合がり、インスリンの必要量もいつもより増加していることも多いのです。食べれないのだけの理由で経口剤やインスリン注射を自己中断してしまうのはかえって危険です。以下の様な状況のときは主治医に連絡をしアドバイスをもらいましょう。
1.まったく食事がとれない
2.下痢や嘔吐がつづく
3.高熱がつづく
4.尿検査用紙を持っている場合 尿ケトンが強陽性となる
5.尿検査用紙を持っている場合 尿糖が強陽性となる
6.血糖自己測定をしている場合 BS250mg/dl以上がつづく
シックデイの時の対応はその人、その時々により違ってきますが大体の目安は以下の通りです。
詳しくは主治医の先生とご相談ください。

シックディの具体的な対応の例


血糖降下剤を服用している場合

インスリン治療中の場合

食事の摂取量

薬の服用量

全量

いつもの量

半分

半分に
(2錠を1錠など)

食事不能の場合


尿ケトン陰性

服薬中止

尿ケトン陽性

インスリン補給の必要性あり(受診を)

食事の摂取量

注射量

全量

いつもの量

半分

1/2量

食事不能

1/3量

病気の際はインスリン必要量が増加していることが多いので食べれないからといって自己判断で インスリンを中断しないようにしてください

シックデイの食事について

1)糖質を主体として消化吸収のよいものを
2)水分や電解質をしっかり補給 (脱水予防)
3)味噌汁、スープ、果汁などを取る

来客、およばれなどで上手に相手するコツ

糖尿病をコントロールするにはこれらをうまくきりぬけることが大切です。がんばってみましょう。

  • お話しできる話題をいつも持ち合わせ、話題提供者になりましょう。
  • 飲むよりつぎ方にまわりましょう。
  • 料理はすべて1/2量を心がけ、一つずつお味見させて頂きたいのでと申しいれしてゆっくり少しずついただきましょう。
  • 外食するときは、周囲に遠慮せずに自分向きのメニューをきちんと選ぶように心がけ、上手にのこす工夫を忘れないようにしましょう。
  • 大盛りを囲んで食事をするときは油料理、濃い味つけ、ホワイトソースをかけるときには量に注意しましょう。
  • およばれですすめられる菓子、果物はひとついただくようにしてゆっくり食べる心がけを忘れないようにしましょう。

外食はカロリーオーバー、栄養素のかたよりなどが起こりやすいので要注意です。
通常の1日必要カロリーは1200~1840kcal(15~23単位)で一食あたりにすると500~700kcalになります。

ファストフードには要注意

 

てりやきバーガー

460kcal
おやつ代わりのハンバーガー、でもちょっとまってください。左のリストのようにちょっとのつもりが、かるく一食分をオーバーしてしまいます。
チキンナゲット

270kcal
フライドポテトS

270kcal
シェイク

260kcal
アップルパイ

220kcal
ドーナッツ

220kcal

 


中華料理はカロリーと栄養バランスに注意
中華メニューは1食、例えば炒飯980kcal,ちゃんぽんセット1120kcalです。

どちらのメニューも野菜不足と脂肪過多が問題ですね


和食定食がベター

お刺身定食なら530kcal、とんかつ定食でも1130kcal


お刺し身定食530kcal 

とんかつ定食1130kcal

和食定食は比較的バランスがとれていますが揚げ物には注意してください


ミニ会席料理


975kcal

バランスがとれてますね


コンビニ弁当

お弁当は800kcal〜1000kcalです。
揚げ物が多く脂質過多になり易いので注意


居酒屋やすしのメニュー

 


コンビニでチョイス

コンビニの惣菜コーナーから3−4品をチョイスしてみました。それぞれカロリーが記載してありますので便利です。お弁当を買うよりもバランスの取れた組み合わせも可能です。

宴会料理について

(宴会ではつい食べ過ぎて、コントロールが乱れるので注意しましょう)
宴会が続くと、つい食べ過ぎたり、飲み過ぎたり、栄養がかたよりがちになります。例えば、フルコースの料理を全部食べると、一食でおよそ1200〜2000キロカロリーにも達します。もったいないですが、全体の2/3は残すようにしましょう。  
中華料理(フルコース1人前) 
1200〜2000キロカロリー (特徴: 蛋白質、脂質が多い)
注意してほしいこと :
1)前後の油料理はさけましょう。
2)自分のお皿にとる場合は少なめにとりわけるようにしましょう。
3)野菜の多いものを選びましょう。
4)油たっぷりの料理は、1/3できれば半分残すようにしましょう。
フランス料理(フルコース1人前)
1400〜2000キロカロリー(特徴:蛋白質、脂質、(糖質)が多い)
注意してほしいこと : 
1)コンソメスープは飲んでもだいじょうぶ。
2)ポタージュスープはできるだけ残すようにしましょう。
3)主菜などは、添え野菜のほかは1/3できれば半分残すようにしましょう4)ドレッシング類はさけましょう。
5)パンにはバターをぬらないようにしましょう。
6)デザートは果物のみ食べるようにしましょう。(ケーキ類は残すようにしてください。)
 
日本料理(フルコース1人前)
1200キロカロリー(特徴:蛋白質は多いが、野菜類が少ない)
注意してほしいこと:
1)向け付け魚の甘露煮、甘い蜜煮などは避けましょう。
(砂糖のとりすぎを防ぐために)
2)刺身:まぐろ、とろ、はまちなど脂ののったものはできれば1〜2切れにとどめましょう。
3)吸い物:そうめんがはいっている時、めんを残しましょう。
(糖質のとりすぎをふせぐため)
4)酢の物:エネルギー低い、ミネラル源なので残さずたべてしまいましょう。
5)焼き物:刺身を残さず食べた時は、できれば半分は残しましょう。
6)揚げ物 エネルギーが高いので避けましょう。食べるのは1/3ぐらいにとどめましょう。
7)煮物:いも類、カボチャはできるだけ残しましょう。
(糖質のとりすぎを防ぐために)
8)ごはん:1日の摂取カロリーが1600キロカロリー以下の制限があるときは、半分残しましょう。
9)果物:食べ過ぎないように、できれば残しましょう。

ヘルシーメニュー

鍋物(かきなべ) 1人前 280kcal

かき12個 白菜60g みそ汁30g
大根60g 春菊60g  
にんじん60g しいたけ60g  

アドバイス: かきは低エネルギーなうえ、鍋物にすると野菜がたくさんとれるので、おすすめの料理です。どの指示エネルギーの人でも残さず食べれます。 また塩分のとり過ぎを防ぐため、汁は残すようにしましょう。

よせなべ  1人前 320kcal

さわら50g

かき60g(5個)

白菜120g

とり肉20g

大根60g

春菊30g

えび25g

にんじん30g

砂糖 4g

アドバイス:よせなべは野菜中心にたべると低エネルギーで満腹感が得られます

経口糖尿病薬1)スルフォニルウレア薬 SU薬

主に膵臓のインスリン分泌細胞に働きインスリン分泌を刺激する薬です。
以前は糖尿病の薬といえばこれでした。 現在、よく使われているのは商品名でオイグルコン、ダオニール、グリミクロン、古いところでラスチノン、ジメリンなどがあります。
副作用は少ないですが、医師からの処方量をこえて服用したり、薬をのんだものの食事をとらなかったり、またいつもより食事量がすくなかったり、運動量が多かった場合は、血糖値が下がりすぎ、いわゆる低血糖症状が出現することがあります。
*:食事療法ができていないのに薬を使うと肥満してしまいます。また、お年寄りにはおもわぬ低血糖が出現することがあります。

SU剤のリスト

一般名

商品名

世代

代謝排泄

代謝産物

半減期
作用時間


1錠あたりの効力
×
グリベンクラミド オイグルコン

ダオニール



肝代謝腎排泄 


不活性


6~24


4~5
グリクラジド グリミクロン


肝代謝腎排泄 


不活性

5~16
6~24


3
×
トルブタミド ラスチノン


肝代謝腎排泄 


不活性

4~5
6~12


1
×
クロルプロパミド ダイアビニース

1

肝代謝腎排泄 


活性

3~6
60


2
×
アセトヘキサミド ジメリン


肝代謝腎排泄 


活性

6~8
10~16


2
グリメピリド アマリール

1錠あたりの血糖降下作用はトルブタミド<グリクラジド<グリベンクラミドの順に強力になります。
(注)”×”のついた薬は使われなくなりました。
服用の方法:
基本的には食前30分前に服用します。軽症では朝食前に半錠位から始めます。その後、血糖値を診ながら、朝夕食前の2回にそれぞれ1錠または2錠と増やして行きます。糖尿病専門医の場合は患者さんの血糖値のパターンにより、その患者さんにあった変則的な処方となることもあります
服用の方法:
基本的には食前30分前に服用します。1日1回または2回です。

経口糖尿病薬2) αグルコシダーゼ阻害薬:

一般名:ボグリボース、アカルボース、ミグリトール
腸管におけるデンプン、蔗糖などの多糖類から単糖類へと分解をするグルコシダーゼという酵素の働きを抑制することにより糖の吸収を遅延させる薬。
商品名:グルコバイ、ベイスン、セイブル
*:おなかがはったり、とにかくおならが良く出ます。決して糖の吸収を阻害する薬ではありません、吸収のスピードを遅くするだけです。ジュースなど始めからブドウ糖などの単糖類を多く含む食品を摂取したときは効果はありません。また、本剤を服用している際に、低血糖が出現した場合は、ブドウ糖を摂取しないと低血糖が遷延する可能性があります。
服用の方法:
各食事の直前に服用します。食後しばらくして服用してもあまり効果はありません。 

経口糖尿病薬3) ビグアナイド剤:

インスリン抵抗性を改善(インスリンの働きをよくする)薬で昔から使われてきましたが、肥満糖尿病患者さんが増加しているため再び注目を集めている薬です
インスリン感受性を良くする作用は以下のメカニズムによります
1 肝・筋肉での糖の分解を促進
2 肝での糖の新生を抑える
3 腸管からの糖の吸収を抑制
肝臓は、血液中で運ばれてきたブドウ糖を蓄えたり、血液中に放出したりして血糖値を調節する大切な臓器です。そこに作用するのがこの薬で、主に肝臓が血液中にブドウ糖を放出するのを抑え、筋肉での糖の利用も促進することでインスリンの働きを高めることで血糖値を改善させます。 
 この薬も古く40年以上使われています。肥満糖尿病に使われますが、やせ型の人でも効果があることがよくあります。体重増加の副作用はなく、低血糖も起こしません。1日朝夕2回、または朝昼夕3回の処方です。    
最近、ビグアナイド薬を長く服用している人ではがんの発生が少ないという疫学調査が出ました。
腎不全や肝硬変など、腎臓や肝臓の働きが悪くなっている場合、検査で造影剤を使う場合、手術前後などでは乳酸アシドーシスという重篤な副作用が出るケースがあるので使用はできません。そういう場合をのぞけば安全で使いやすい薬です
 主な薬品の商品名 メルビン、メトグルコ

経口糖尿病薬4) インスリン感受性改善剤:

一般名:ピオグリタゾン
ブドウ糖は血流に乗って全身に送られ、インスリンの作用により筋肉などに取り込まれてエネルギーとして利用されます。この薬は、筋肉細胞でインスリンの効果を高め、効率よくブドウ糖が細胞内に取り込まれるようにします。
また、脂肪細胞に働いて、インスリン抵抗性を改善するホルモンのアデポネクチンを増やします。主に内臓脂肪がたくさんたまった肥満糖尿病の人に用います。
インスリンの分泌は刺激しないので低血糖は起こしません。また中性脂肪を下げ、脂肪肝も改善するという作用もありますが、食生活の乱れがあると肥満が増強、血糖は下がったが太ってしまったということも多いので、この点には注意が必要です。通常朝1日1回の処方です。また塩分をよくとる人では浮腫(ふしゅ)がでることが多いようです。
*:この薬はインスリン抵抗性がない人、やせ型の糖尿病の方にはあまり効果がないと考えられます。 インスリン抵抗性の有無を調べる手軽な方法としては、空腹時インスリン値があります。空腹時で10U/ml以上であればインスリン抵抗性がある可能性が高いと思われます。またHOMA−Rという指数 空腹時インスリン値x空腹時血糖÷405>2.5以上でも抵抗性があると判断できます。 また、肥満している人(BMI>25)、腹囲が大きい人(男性>85cm、女性>90cm)は総じてインスリン抵抗性であることが多いと思われます。 もちろんこの薬でも食事療法、運動療法ほ必要性は変わりません。
最近、男性でこのお薬を飲んでいる人で、膀胱ガンの発生率がすこし高くなる可能性があることが報告され、注意喚起がなされました。
服用の方法:
食後に服用します。単独では空腹時に服用しても問題ありません。
商品名:アクトス

経口糖尿病薬5) 速効型インスリン分泌刺激剤

一般名:ナテグリニド、ミチグリニド
D―フェニルアラニンというアミノ酸の誘導体の一種で、従来のインスリン分泌刺激剤(SU剤)に比べ作用時間が極めて短く、食事直前に服用し、食後血糖を抑えることができます。血糖降下作用はそんなに強力ではありませんが、いままでのSU剤にくらべ低血糖が起こりにくい特徴があります。 
商品名:スターシス、ファスティック、グルファスト
服用の方法:
各食事の直前に服用します。食後しばらくして服用してもあまり効果はありません。

経口糖尿病薬6) DPP-4阻害薬

インクレチン作用を増強する薬剤 
静脈に直接ブドウ糖を投与するより、おなじブドウ糖の量でも経口的に負荷(つまり飲んだとき)したときにインスリン分泌が多いという現象は昔から知られていました。これは腸内に栄養(ブドウ糖など)が入ってくると小腸からインクレチンというホルモンが(GLP−1、GIP)分泌されすい臓のインスリン分泌細胞(B細胞)を刺激することによります。 食べることにより入ってくる糖の刺激に加えてインスリン分泌を増強するわけです。通常はこのインクレチンはDPP4という酵素により速やかに(2分程度)分解されてしまいます。 糖尿病患者さんではこのインクレチン効果が低下していることが知られています。 特にGLP−1の分泌が低下しています。またGLP−1は血糖値を上昇されるすい臓から分泌されるグルカゴンというホルモンの分泌も抑える作用があり、糖尿病ではこのグルカゴンが相対的に増えていることも血糖値があがるひとつの要因です。DPP4阻害薬はGLP-1を分解を阻止することによりGLP-1の効果を増強し、食後インスリン分泌を増強、グルカゴン分泌を抑制することで血糖の上昇を抑えます。
その性格上 1日1回の服用で効果があり、食事を食べた時だけ、血糖値が高いときだけ インスリンが出やすくなるので低血糖が少ないのが特徴です。
今までのSU薬と違い、食事をして血糖値が上がるときにだけインスリン分泌を増強するため、低血糖が出にくいのが大きな特徴です。車に例えると、SU薬は、朝服用してインスリン分泌のアクセルをいったん踏むと半日ほど踏みつづけることになるのに対し、DPP―4阻害薬は、食事をしたときだけアクセルを踏むという感覚です。
シタグリプチン(商品名はグラクティブとジャヌビア)ビルダグリプチン(エクア), アログリプチン(ネシーナ),テネグリプチン(テネリア),トラゼンタ,アナグリプチン(スイニー),サクサグリプチン(オングリザ)

経口糖尿病薬6) DPP4阻害薬

2009年に登場した新しい経口薬で、インクレチン作用を増強する薬剤です。

この薬剤はインクレチンホルモンを分解するDPP−4という酵素の働きをブロックすることで血液中のインクレチンの濃度を上げることで血糖降下作用を示します。

インクレチンとは静脈に直接ブドウ糖を投与するより、おなじブドウ糖の量でも経口的に負荷(つまり飲んだとき)したときにインスリン分泌が多いという現象は昔から知られていました。これは腸内に栄養(ブドウ糖など)が入ってくると小腸からインクレチンというホルモンが(GLP−1、GIP)分泌されすい臓のインスリン分泌細胞(B細胞)を刺激することが明らかになりました。 腸管に糖が入ってきた時点でインスリンを出やすくするホルモンの信号が膵臓に届き、実際に食べることにより血液中に入ってくる糖の刺激に加えてインスリン分泌を増強するわけです。 通常はこのインクレチンホルモンは血液中に存在するDPP4という酵素により速やかに(2分程度)分解されてしまいます。 糖尿病患者さんではこのインクレチン効果が低下していることが知られています。 特にGLP−1の分泌が低下しています。またGLP−1は血糖値を上昇されるすい臓から分泌されるグルカゴンというホルモンの分泌も抑える作用があり、糖尿病ではこのグルカゴンが相対的に増えていることも血糖値があがるひとつの要因です。DPP4阻害薬はGLP-1を分解を阻止することによりGLP-1の効果を増強し、食後インスリン分泌を増強、グルカゴン分泌を抑制することで血糖の上昇を抑えます。

血糖改善効果: どの薬剤もほぼ血糖を下げる効果は同じようなもので単独で使用した場合、他の糖尿病薬に追加した場合ともに平均でHbA1cは1%弱 改善します。 ただ良くなったと食事療法を怠り体重が増えると半年ぐらいでまた血糖が上がってきますので要注意です。油断大敵です

食事を食べた時だけ、血糖値が高いときだけ、インスリンが出やすくなるので単独で使用する場合は低血糖が少ないのが特徴ですが、SU薬やインスリンとの併用ではやはり低血糖に注意が必要です。 発売当初、SU薬との併用で重症の低血糖が報告され、糖尿病学会から、SU薬と併用するときはSU薬の量を減量することを考え低血糖の出現に注意を払うことといった適正使用の勧告がだされました。その後は重症低血糖の報告も減少しています。海外では膵炎が起こしやすいという報告もありましたが、未だ因果関係は明らかではなく、日本では今のころ大きな副作用は報告されていません。 もちろん新しい薬であり、長期にわたる副作用などについては今後のデータの積み重ねが必要です。

現在日本で発売されているDDP-4阻害薬は次の7種類です

一般名   (商品名)

シタグリプチン(グラクティブとジャヌビア)

ビルダグリプチン(エクア)

アログリプチン(ネシーナ)

リナグリプチン(トラゼンタ)

テネグリプチン(テネリア)

アナグリプチン(スイニー)

サクサグリプチン(オングリザ)

服用方法: エクアとスイニーは1日朝夕2回服用、その他は1日1回朝服用の薬剤で食前、食後 基本的にどちらでもOKです。

 

経口糖尿病薬7)SGLT-2阻害薬

SGLT−2阻害薬

SGLT(ナトリウムイオン・ブドウ糖共役輸送担体)とは、腎臓でブドウ糖を体に再吸収する役割を持っている糖輸送担体(糖の運び屋。ブドウ糖が細胞に適切に取り込まれるために働く分子)です。腎臓の働きは血液中の老廃物をろ過し尿として体の外に毒素や老廃物を捨てる役割がありますが、実は血液中のブドウ糖は、尿が作られるときに一緒にろ過されます。その量は1日180gと言われています。しかしブドウ糖だけはそのまま尿として捨てられるのではなく、そのほとんどが腎臓の尿細管でもう一度血液中に戻されます。この尿細管でのブドウ糖の再吸収を行っているのがSGLTです。 健康な状態では尿中にブドウ糖は検出されません。ところが、血糖値が高くなるとこのSGLTの再吸収する量が追いつかなくなり、尿中にブドウ糖が出てきます。糖尿病という名称は、尿にブドウ糖が検出されることに由来しています。 SGLT2阻害薬はSGLTのこの働きを阻止することで、ブドウ糖を体に再吸収させることなく、尿を通して体外へ排出させる薬剤です。 まさに逆転の発想、尿と一緒にブドウ糖を排出すれば、血液中のブドウ糖濃度が低くなるのですから、薬を使って、どんどんブドウ糖を体外に排出させようというのがこの薬のコンセプトです。これは、今までの薬剤と全く違いインスリンの作用に関係なく血糖値を下げる薬です。 SGLTには2種類ありそのうちのSGLT2の働きをだけをこの薬剤は抑えるので、実際は100%再吸収が阻害されるのではなく、2/3は再吸収され、約60gが尿に排泄されます。 60gのブドウ糖は240キロカロリーになり、500mlの清涼飲料水の糖分1本分プラスアルファ程度のカロリーです。

この薬剤でどのくらいの血糖値を改善する効果があるのか、どのような副作用があるのか、どんな糖尿病薬との組み合わせがよいのか、どんなタイプの糖尿病で効果があるのか、まだまだこれからです

治験の結果からみてみると、期待される効果と懸念される副作用は以下の通りです

期待される点

血糖改善効果: 単独でも他の糖尿病薬との併用でもHbA1cで1%近く下がるようです。

低血糖を起こさない: 単独で使用する場合は低血糖はおこさないと思います SU薬やインスリンとの併用時にはもちろん気を付ける必要があります。

体重減少効果: 特に肥満傾向にあるかたではその効果が顕著のようです。 体重減少を伴う糖尿病薬はありませんでした。 これは画期的です ただし治験に参加された先生方に聞くと治験期間が終了後体重はもとにもどったという意見が多かったようです。

懸念される副作用:

尿路感染症・性器感染症: 尿に常に糖が排泄されているので、やはり膀胱炎など尿路系の感染症が多くなります。海外での報告ではその発現率は10%以上ですが、日本のデータは2%と低いものです。 日本人は欧米人より入浴習慣があるからもしれません。 男女でみると女性に多く見られます。 また女性の場合は性器感染症もあるようです。また陰部掻痒症なども報告されています。

脱水: 尿量が増えるため脱水傾向があるようで夏には水分補給に心がけるなど注意が必要でしょう

ケトーシス:また糖が排泄されるため脂肪が燃焼、これは脂肪組織が減るという良い面がある反面 脂肪分解によりケトン体が産生、インスリンが不足した状態が重なるとケトアシドーシスなどの重篤な合併症を引き起こす可能性もあります。

筋量低下: また60gのブドウ糖が排泄されるためエネルギー不足となり、脂肪が燃焼すればいいのですが、しばしば筋肉に備蓄している筋肉を分解しアミノ酸を産生、これを肝臓でブドウ糖産生に使われる結果、筋肉量が減る可能性もあります 高齢者では特に筋肉が減少傾向にあり注意しないと行けません。

この薬のよく適応となりそうな患者さん像

中年の肥満の男性、食生活が不規則でなかなか減らすことができていない、体重が減らない男性でしょうか?

逆に処方しないほうが良い患者さん やせ型の高齢者糖尿病でしょう 脱水になりかかっても口渇など出にくいこともあり特に夏場は熱中症も最近多くなっているので要注意です

発売、または発売予定のSGLT-2阻害薬

イプラグリフロジン(スーグラ)

ダパグリフロジン (フォシーガ)

ルセオグリフロジン(ルセフィ)

トホグリグロジン (アプルウェイ・デベルザ)

カナフログリジン

 

 

Q1糖尿病の用語集

1単位とは

食品のエネルギー量の単位(食品交換表にて用いられている)
1単位=80kcalである。なぜ100kcalにしなかったのでしょうか?茶碗1杯のご飯がちょうど160kcalであったので、それを2単位にするときりがよく換算しやすいからだそうです。


3大栄養素

ヒトを含め動物が生きていく上で必要不可欠なもの。

  • 糖質(1g=4kcal):主にエネルギー源として用いられる。
  • タンパク質(1g=4kcal):骨格、筋肉、血液などの身体の構造物を受け持つ。
  • 脂質(1g=9kcal):主にエネルギーの貯蔵に使われる。

C-ペプチド
膵臓にあるランゲルハンス氏島にあるβ細胞からインスリンが分泌されるときにでるインスリン分子の切れ端。インスリン分子が生成されるときの足場のようなもので特別な作用はありません。しかし、インスリン分子一個につきC-ペプチドも一個放出されるので、これを測定することによりインスリン治療中の患者においてもインスリン分泌能力を推測できるすぐれものでもあります。  


DM
Diabetes Mellitusの略:糖尿病のこと、また、医者はしばしばDMのことをディアベとも呼んでいます。


HbA1c
ヘモグロビンA1cの略


SMBG
Self Monitering of Blood Glucose(血糖自己測定)の略。簡易血糖測定器を用いて家庭内で血糖値を自分で測定することです。小さなバネ式の針で突き指先からごく微量の血液を採血して用います。最近は小型、安価、正確な器械が簡単に手に入るようになってきました。


アルコール
糖尿病のコントロールを乱す悪魔の誘い水


インスリン
膵臓にあるランゲルハンス氏島にあるβ細胞から分泌されるホルモン。インスリンには血糖値をさげる作用があります。この作用はインスリンが筋肉や肝臓細胞に働き血液中のエネルギー源であるブドウ糖を細胞内に取り込ませることによるものです。生物が生命活動を維持するうえでも必要不可欠なホルモンです。詳しくは[糖尿病てどんな病気]のページを参照。


グリコヘモグロビン
ヘモグロビンA1cと同じ言葉


グリコアルブミン
中期的な糖尿病コントロール状態の指標で、過去1〜2カ週間の血糖コントロールの状態(血糖値の平均)を反映します。血液中のアルブミンというタンパク質に糖が結合したものです。


グルカゴン
膵臓にあるランゲルハンス氏島にあるα細胞から分泌されるホルモン。インスリンの作用と反対に血糖を上昇させる作用があります。低血糖発作の時の治療に使われます。また、グルカゴンには強力なインスリン分泌作用をもつのでインスリン分泌能力を判定する検査にもつかわれます。


食品交換表
食品を栄養素のバランスから6つのグループに分類したもの。 この食品交換表を用いることにより日々の食事にて食品をバランス良く選ぶことができます。糖尿病の食事療法には必携です

表1 穀類芋類糖質の多い野菜・種実  (糖質を主として供給する食品群) 表2 果実類

表3 肉・魚・卵・ 大豆製品・チーズ(蛋白質を主として供給する食品群) 表4 乳製品
表5 油脂類・多脂性食品
(脂質を主として供給する食品群)
表6 野菜・海藻・きのこ類
(ビタミン・ミネラルを主として 供給する食品群)



ヘモグロビンA1c
長期的な糖尿病コントロール状態の指標で、過去1〜2カ月間の血糖コントロールの状態(血糖値の平均)を反映します。高血糖が続くと赤血球のなかのヘモグロビンと呼ばれる酸素を運搬するタンパクの一部に糖がゆっくりと結合します。ちょうど船底にこびりつく貝のようにものです。一度、つくとはなれません。そして、その赤血球の寿命が尽きるまで離れません。健康人では6.1%以下です
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ペットボトル症候群
青少年が清涼飲料水の飲み過ぎで突然に糖尿病になる病態。発症は急激で昏睡状態になることもある。当初はインスリン治療も必要となることが多い。
最近、増加しています。気をつけましょう。

Q2:糖尿病はなおらない病気なのでしょうか?

糖尿病は糖尿病体質のうえに多くの危険因子が重なり発症します。体質を変えることは出来ませんが、多くの場合食事、運動療法などの自己管理でライフスタイルの改善することにより危険因子を解除できれば高血糖状態は改善します。糖尿病が怖いのは、高血糖による合併症です。糖尿病であっても良好な血糖コントロール状態であれば、合併症は進行せず健康な状態が維持できるわけです。無病息災ならぬ一病息災です。

Q3:尿に糖がでても糖尿病じゃない場合があるのですか?

糖尿病は尿に糖が出る病気と書きますが血糖値が高いことが病気の本体です。通常、血糖値が160〜180mg/dl 値以上に上昇した場合に尿にもれでてくるのですが、そのしきいの値が120mg/dl前後と低い方がおられます。そのような方では高血糖状態にならなくても尿糖が陽性になります。このような状態は腎性糖尿とよばれ糖尿病ではありません
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Q4:インスリン注射は一度始めると止められないのですか?

多くの飲み薬は膵臓のインスリン分泌細胞(B細胞)を刺激し、インスリンの分泌を促すことで血糖値をコントロールするものですが、このB細胞が疲弊してくると薬で刺激してもインスリンが出なくなってきます。こうなってくると外からインスリンを補充する必要が出てきます。これがインスリン注射です。インスリンはホルモンなので飲むと胃で消化・分解されてしまいます。ですから皮フから直接注射で補給するしかありません。
基本的にはインスリン注射を始めるときはB細胞がそれだけ減少しているわけですが、高血糖が続いている場合や他のストレスが存在する場合は一時的にB細胞の機能が低下している場合もあります。この場合はインスリン注射を行ない血糖コントロールが良好になるとインスリン分泌能力が改善し、インスリン注射から飲み薬に再び変更できることもあります。

Q5:ビールや日本酒はだめだが焼酎やウイスキーは良いのですか?

確かにビール、日本酒は蒸留酒に比べ糖質が含まれていますが、その量は僅かでありアルコール飲料のカロリーの大半はアルコールの濃度によります。日本酒が悪くて焼酎ならよいということはありません。(アルコール1gで7kcalです)
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Q6:ビールを飲んだ日はご飯を減らせばよいのですか?

アルコールは1gで7kcalとカロリーを計算しますがヒトの身体にはアルコールを直接エネルギーとして利用するための機能はありません。飲んだアルコールは肝臓に運ばれ一旦、中性脂肪に変えられ貯蔵されます。一方、コメやパンは消化分解され体内にブドウ糖として吸収されると速やかにエネルギーとして燃焼されます。ですからビールとご飯は交換することは出来ないのです

糖尿病合併症予防薬

1)アルドース還元酵素阻害剤:キネダック
現在、市販されている唯一の薬です。 糖尿病性神経障害によるしびれの改善、神経伝導速度の改善は報告されています。 そのメカニズムは高血糖による細胞内のソルビトール蓄積による細胞浮腫(細胞のむくみ)を改善することにより神経細胞の機能を回復させます。

Q7:糖尿病は単なる贅沢病なのでしょうか?

日本においても戦前(貧しかった)は糖尿病患者はあまり見かけませんでした。確かに過食と運動不足が糖尿病の大きな危険因子のひとつです。しかし、栄養失調による糖尿病、慢性膵炎後の糖尿病が存在します。また小児期におこることが多い1型糖尿病はウイルスの感染や免疫異常(自己免疫異常)により起こることが知られています。糖尿病は、贅沢をしていないひとにも起こります。ご注意を!

Q8:糖尿病は人だけの病気じゃないのですか?

糖尿病は人間に特有な病気ではありません。ペットの犬、猫はもちろん、マウスやラットにも糖尿病を起こすものがいます。サカナの中では鯉のせこけ病(背中の筋肉が細くなり痩せる)が有名です。鯉より下等な動物には認められないようです。

糖尿病の病因について 1.糖尿病の危険因子

糖尿病(2型糖尿病)はなぜおこるのでしょうか? このコーナーではその原因について考えてみましょう。
糖尿病の危険因子 あなたはいくつ危険因子をもっていますか?
糖尿病の危険因子には、下の図に示すような肥満、運動不足、過食、ストレスなどがあげられます。しかし世の中には同じように不摂生な生活をしていても糖尿病になりやすい人とそうでない人がいます。その差はどこに起因するのでしょうか?
その差を決めているのが遺伝因子なのです。親兄弟など血縁関係の方に糖尿病がおられる方は要注意です。そのような方はすでに最大の糖尿病の危険因子を持っている可能性が高いからです。
危険因子のなかで最大のものは遺伝因子です。
あなたの糖尿病危険度を診断してみましょう。
さて、これらの危険因子はどのように糖尿病を引き起こすのでしょうか?
ひとことでいうと多くの危険因子がインスリンの作用不足を引き起こすのです。そしてインスリンの作用不足には2つの意味合いがあります。ひとつはインスリンの量的不足、つまりインスリンの分泌能力が低下することにより量的な不足状態におちいる場合。 もう一つは、量的には問題ないがインスリン作用が弱まり質的に不足する場合、これをインスリン抵抗性といいます。これはインスリン自体に問題があるというよりも、インスリンが作用する標的の臓器(筋肉細胞、脂肪細胞、肝臓の細胞)レベルに異常が存在することによります。

糖尿病の病因について 2.インスリン分泌不全と抵抗性、グルカゴン過剰

従来糖尿病の病因としてインスリン分泌不全と抵抗性という2つが大きな要因であり単独または相互に関連し糖尿病を発症すると考えられていました。インスリン分泌不全は主に遺伝因子が関与していると考えられ、インスリン抵抗性は過食、運動不足による肥満・内臓脂肪の増加などの環境因子、遺伝因子の両方が関与していると考えられています。 グルカゴンについては25年ほど前には盛んに研究されていましたが最近はあまり注目されなくなっていました。 ここに来てDPP-4阻害薬が登場しグルカゴンの役割が再度脚光をあびています。
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すい臓の中にある小さな細胞の塊、ランゲルハンス氏島と呼びますがここにインスリンを分泌するB細胞とグルカゴンを分泌するA細胞があります。糖尿病ではB細胞からのインスリン分泌が低下し、筋肉や脂肪細胞への血液中のブドウ糖の取り込みが低下し血液中のブドウ糖が過剰になる(=血糖値が上昇)、一方A細胞からでるグルカゴンは相対的に過剰となっています。
グルカゴンは肝臓に働き、肝臓にためているグリコーゲンからブドウ糖を産生し血液中に放出します。 グルカゴンは健康状態では空腹時に分泌され血糖が下がりすぎないように肝臓から糖を放出させ血糖値をささえます。 一方食後は食事から摂取する糖質が血液中に流れ込んでくるので、肝臓からの糖の放出は必要なくグルカゴン分泌は抑えられ肝からの糖の放出をほぼ0となります。 これが糖尿病になると食後にもグルカゴンが出続け、食後の血糖が上昇する一因となります。 ここに大きく関与していると考えられるのがインクレチンホルモンの作用の低下です。

糖尿病の病因について 3.糖毒性

もうひとつ糖尿病の発症を加速する因子に糖毒性というものがあります。高血糖そのものが、インスリン分泌を低下させ、またインスリン抵抗性を増強させることが知られています。それらが、また血糖値を押し上げるという悪循環におちいり糖尿病状態が進んでいきます。

糖尿病の病因について 4.2型糖尿病の自然歴

2型糖尿病の自然歴

肥満タイプの糖尿病
やせタイプの糖尿病
インスリン抵抗性

高インスリン血症 (B細胞の過剰反応)

インスリン分泌不全 (B細胞の疲弊)

糖尿病
インスリン分泌不全

糖尿病
肥満タイプの糖尿病では最初に体質的にインスリン抵抗性が存在するため、代償性にインスリン分泌が亢進しており高インスリン血症を呈します。始めのうちはインスリンはどんどん分泌され見掛け上血糖値は上がりません。しかしある時期からインスリンの分泌能力の限界をこえインスリン分泌が低下しだし血糖値が上昇しはじめ糖尿病となります。 痩せ型の糖尿病では比較的最初からややインスリン分泌が低下しており血糖値が上昇してきます。

1型糖尿病と大きく異なるのは分泌低下がゆるやかなことです。

糖尿病の病因について 5.糖尿病の遺伝子因子

糖尿病を引き起こす遺伝子は一個だけではなくいくつかの遺伝子が作用し合って糖尿病になると考えられます。現在、世界中でその遺伝子群を懸命に探索しています。

こんな症状はありませんか?

糖尿病のある場合に起きる症状です。どれをとっても特徴的なものではありません これらの症状があれば一度検査を受けましょう


高血糖そのものによる症状

慢性合併症による症状
疲れやすい
のどが乾く
トイレが近くなる
尿量もも多くなる
いくらでも食べれる
妙にやせてくる
怪我が化膿しやすい
目が見えにくい
手足がしびれる
足が冷たい
立ちくらみ
足がむくむ
こむら返り
運動時の胸痛
物忘れが激しい
長時間歩くと足が痛くなる

糖尿病セルフチェック (あなたの糖尿病危険度は?)



家族(血縁者)に糖尿病がある


3点


20歳代前半より体重が増えている


2点


家族に肥満・脳卒中・心臓病がある


1点


甘いものや脂肪分を好んで食べる


1点


車が足がわり(運動不足)


1点


ストレスが多い(せっかち、イライラ)


1点

糖尿病治療における漢方薬

漢方薬の糖尿病に対する効果については、糖尿病合併症に対して西洋医学的に用いられ一定の効果を示すものがいくつか存在する。 しかしインスリン分泌不全およびインスリン抵抗性を改善し直接的に血糖コントロール状態を改善するものは見あたらないようである。
糖尿病性神経障害に対する漢方
糖尿病合併症の成因には細胞レベルの高血糖による以下の変化が重要である
1.蛋白のグリケーション
2.AGEの沈着による蛋白変性
3.PKC活性の亢進
4.ポリオール代謝経路の亢進
5.ミオ・イノシトール競合阻害による減少
6.Na/K ATPase活性の低下
7.血小板凝集能の亢進
8.線溶系の低下
特に神経障害ではポリオール代謝経路の亢進以下4、5、6が重要である。以下に示す漢方薬ではARI様の効果を示し、しびれ、頭痛など自覚症状の改善が認められる。

 

赤血球内
ソルビトール

血小板凝集能

血小板粘着能

八味地黄丸

牛車腎気丸

芍薬甘草湯

桂枝加尤附湯

疎経活血湯

桂枝伏苓丸

糖尿病性単発性神経障害に対する牛車腎気丸の効果についての検討
対象:
NIDDM 100例 男性55例、女性45例 平均年齢62歳、64歳 糖尿病罹病期間13年、15年
治療:
食事療法単独7%、経口血糖降下剤54%、インスリン39%
糖尿病コントロール状態 HbA1c9.6%、9.4%
方法:
牛車腎気丸を7.5〜5.0g/日を36ヶ月以上投与した。
結果:
投与開始後1ヶ月目で78%の症例で自覚症状の改善が認められた
下肢脱力感72%、しびれ感67%、下肢痛65%、冷感64%、
無効例を検討してみると、下肢のほてり感、灼熱感を主訴とする症例であった。
MCV、SCV、振動覚検査など他覚所見での改善度は有意ではなかった。

1.糖尿病の診断

2010年に10年ぶりに糖尿病の診断の基準が新しくなりました。以前は血糖値が空腹時(前夜から絶食して朝食前に測る)126mg/dl以上,随時(食後など、いつ測った血糖値でもOK)200mg/dlまたは 75g経口ブドウ糖負荷試験(OGTTと略します、75gブドウ糖のはいった甘い試験用のサイダーを一気飲みをしてもらい2時間後に採血します)2時間値200mg/dl以上であれば糖尿病と考えいいのですが、正式に糖尿病と診断するためには1回だけの検査ではだめで、別の日にも血糖値をはかり、2回連続で血糖値が高くないと糖尿病とは診断できませんでした。 ただし、診察の結果、糖尿病の症状のある場合は、HbA1cが6.5%以上であれば1回で糖尿病と診断できるということでした。 今回どこが大きく変わったのか? 一言でいうとHbA1c (ヘモグロビンエーワンシー)を正式に糖尿病の診断に取り入れたことです。血糖と同時にHbA1cをはかりそれが6.5%以上であればその場で糖尿病と診断し治療を開始することになりました。なぜ6.5%以上なのか、それは代表的な糖尿病合併症である網膜症がHbA1cが6.5%以上から発生率が上昇すること、HbA1cと血糖値の関係を調べてみると空腹時血糖126mg/dl、75gOGTTの2時間値200mg/dlが、HbA1cでは6.5%に相当したころから決まりました。
血糖値の高さが以下の基準を満たす場合にその日に糖尿病と診断します。
1腹時血糖値が126mg/dl以上 または 随時血糖値が200mg/dl以上
2同日に測定したヘモグロビンA1cが6.5%以上
75g経口糖負荷試験にて以下の条件を満たすとき(静脈血漿)

0分値 2時間値
糖尿病型 126mg/dl以上 または 200mg/dl以上
正常型 110mg/dl未満 かつ 140mg/dl未満

上記のいずれの満たさない場合に境界型糖尿病型とする。
境界型糖尿病型から糖尿病に移行することが多いので糖尿病に準じて治療、経過観察をする必要ある。
健康診断や人間ドックで境界型糖尿病を指摘された場合は要注意です。指摘を受けたその時点では問題なくてもいずれ糖尿病へ進展する可能性も高く、境界型と診断された場合は、早期から食事療法や運動療法を通じて糖尿病の危険因子を取り除くようにしていくようにしましょう。

☆H24より、HbA1cが国際標準値になりました。(以前より0.4%高くなっています)

判定結果


3点以下
green.gif まず糖尿病については大丈夫でしょう。でも不摂生していると糖尿病以外の高血圧、痛風、高脂血症、脂肪肝などにならないとも限りませんので万事ほどほどにしてください。


4-5点
yellow-84.gif ちょっと要注意です。今のうちから養生しておいたほうが安全です。腹八分目でバランスのとれた食事、毎日の適度な運動(歩くことから始めましょう)に心掛けましょう。アルコールもほどほどに

6点以上
red-84.gif これは危険です。最近、健診などから遠ざかっておられるなら早速検査を受けてみて下さい。現在、健診などで異常値の出ていない方も安心できません。定期的に検査を受けて下さい。食事は腹八分目で野菜も豊富なバランスのとれたもの、間食は少なめに、アルコールも量を控えて下さい。体重オーバーの方は減量に心掛けましょう。運動はまず1日1万歩を歩くようにしましょう。

2.血糖コントロールの指標

ヘモグロビンA1c(HbA1c) =グリコA1c
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ヘモグロビンA1c(HBA1c)はグリコヘモグロビンともいい、酸素を運ぶ赤血球(血液の赤い成分)を構成するヘモグロビン分子(たんぱく質)のアミノ酸に血液中のブドウ糖(グルコース)が反応し結合したものを言います このような反応を糖化、グリケーションと呼び、正常血糖値の範囲では4.8%から6.2%の値となります。この反応は血糖値が高いほどおこり、HbA1cは赤血球寿命が約90日であることから、採血した日からさかのぼってだいたい過去2ヶ月間の平均血糖値と相関することが知られています。  HbA1cは精度の高い測定法で、糖尿病の診断、治療をしていく上で最も重要な指標としてもちいられています。 ただ腎臓や腎臓が悪い場合、貧血がある場合などはその値が実際より低めにでたり、高めになったりすることがあります。
グリコアルブミン
中期的な糖尿病コントロール状態の指標で、過去1〜2カ週間の血糖コントロールの状態(血糖値の平均)を反映します。血液中のアルブミンというタンパク質に糖が非酵素的に結合したものです。HbA1cとおなじメカニズムです。健康人ではおおむね16%以下です。
現在は日本赤十字の献血の際に測定し献血していただいた人に報告がいくようになっています。献血された際にはぜひその値に注目してください、
尿糖
ずいぶんと以前は糖尿病診断の検査にも用いられましたが、現在はあまり重要視されません。尿糖は血糖値が160〜200mg/dlに上昇しないと出現しません。 老人になるとその閾値はだんだん上昇し尿糖が出にくくなる傾向にあります。
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3.インスリン分泌能力の指標

血中インスリン値(IRI)
空腹時のインスリン値は、インスリン分泌能力よりもインスリン抵抗性の指標となります。抵抗性が強いほどインスリン分泌が代償性に亢進するからです。空腹時インスリン値が10U/ml以上の場合、インスリン抵抗性の存在が疑われます。インスリンの分泌能力を見るには糖負荷試験やグルカゴン負荷試験に対する反応性をみることが必要です。
インスリン治療中の患者さんの場合は、打ったインスリンなのか自分の膵臓から分泌されたインスリンなのか区別できないので測定しても検査結果はあまり意味がありません。その場合は次に述べるC-ペプチドを用います
血中・尿中C-ペプチド値(CPR)
膵臓にあるランゲルハンス氏島にあるβ細胞からインスリンが分泌されるときにでるインスリン分子の切れ端。インスリン分子が生成されるときの足場のようなもので特別な作用はありません。しかし、インスリン分子一個につきC-ペプチドも一個放出されるので、これを測定することによりインスリン治療中の患者においてもインスリン分泌能力を推測できるすぐれものでもあります。これは尿中に排泄されるので尿中のC-ペプチドを測定することによりインスリンの分泌量を推し量ることができます。

4.糖尿病合併症の指標

尿中微量アルブミン量
高血糖による腎臓の障害の指標、早期から尿に血液中の蛋白の代表であるアルブミンがごく少量尿中に排泄されます。従来の尿検査ではとらえられなかったごく早期の腎症の指標です。

5.治療の目標

糖尿病の治療目標
糖尿病の治療の目標は血糖値を下げることではありません。もちろん血糖値を下げることは大切ですが、最終的な目標としては、糖尿病によって引き起こされる合併症の予防や進展を阻止をし、健康な人と同様の健康寿命をたもつことです。 糖尿病合併症には、まず慢性の高血糖による糖尿病三大合併症(網膜症,腎症,神経障害の細小血管障害:ミクロアンギオパチー)があり、これら合併症の予防のためにHbA1c,空腹時血糖の目標値が決められています。
糖尿病であっても良好な血糖コントロール状態であれば、合併症は進行せず健康な状態が維持できるわけです。糖尿病は糖尿病体質のうえに多くの危険因子が重なり発症します。体質そのものを変えることは現時点ではくの場なn困難ですが、食事、運動療法などによりライフスタイルを改善し危険因子を消去できれば高血糖状態は改善

治療目標は最終的には6%を達成したいものです。 また糖尿病を早く見つけ、より早期から血糖コントロールをしっかりしておくと、高血糖を放置してから治療を開始した人にくらべ、後々も糖尿病の合併症が進行しにくいという「遺産効果:レガシー効果」も報告されています。糖尿病も早期発見、早期治療が大切なのです。
ただし、最近、食事や運動療法が不十分なまま薬物療法で無理矢理さげようとすると低血糖が頻発したり体重増加が認めれ、このためにか、かえって死亡率が上昇したという研究報告がありました。急がず、慌てず、ゆっくり慎重に血糖値をよくすることが大切です。患者さんの状況を見て、その人その人にあわせた目標を設定します。

そこで2013年熊本市において開催された日本糖尿病学会で熊本宣言が採択されました

糖尿病合併症を予防し健康寿命を延ばすためには、まずHbA1cを指標に7%未満を目指しましょう というものです

熊本宣言

と同時に7%達成が困難な場合、例えばすでに重症の糖尿病合併症がある方、すでに脳梗塞や心筋梗塞など動脈硬化性の病気が進行している方、進行癌がある方、余命の少ない方、低血糖を起こす危険性が高い方などは無理せずまずは8%を目指しましょうというメッセージも出ました。

 

治療目標

6.その他の指標

糖尿病合併症のうち大血管障害(マクロアンギオパチー;脳梗塞や心筋梗塞など動脈硬化性疾患)の増加も大きな問題です。これを予防するためにはHbA1cを下げるだけでは不十分であり、食後2時間値の血糖をあげないことも大切です。さらに血糖以上に血圧や脂質などのコントロールも重要で下記の治療目標があります。

LDLコレステロール値 (120mg/dl以下)
HDLコレステロール値(40mg/dl以上)
中性脂肪値 (150mg/dl以下)
血圧 (130/80mmHg以下)

以下の項目も陰性であること。
尿蛋白  (腎臓の機能低下の目印)
尿ケトン体(脂肪が燃焼した際に出てくる廃棄物)

現在開発中の薬

SGLT−2阻害薬
SGLT2とは、腎臓でブドウ糖を体に再吸収する役割を持っている糖輸送担体(糖の運び屋。ブドウ糖がさまざまな臓器の細胞に適切に取り込まれるために働く分子)です。この働きを阻止することで、ブドウ糖を体に再吸収させることなく、尿を通して体外へ排出させます。
これは、インスリンの作用とは関係なく、血糖値を下げる薬です。そもそも糖尿病という名称は、尿にブドウ糖が検出されることに由来しています。
血液中のブドウ糖は、腎臓の糸(し)球体(きゅうたい) (ザルのような構造)で血液中の老廃物をろ過し、尿が作られるときに一緒に濾(こ)されますが、ブドウ糖だけはそのまま尿として捨てられるのではなく、そのほとんどが腎臓のなかでもう一度血液中に戻されます。ですから、健康な状態では尿中にブドウ糖は検出されません。ところが、血糖値が高くなるとこの再吸収する量が追いつかなくなり、尿中にブドウ糖が出てきます。
ただし、逆転の発想をして、尿と一緒にブドウ糖を排出すれば、血液中のブドウ糖濃度が低くなるのですから、薬を使って、どんどんブドウ糖を体外に排出させようというのがこの薬のコンセプトです。
現在、複数のメーカーが開発中で、臨床試験も進んでおり、どのくらいの血糖値を改善する効果があるのか、どのような副作用があるのか、どんな糖尿病薬との組み合わせがよいのか、どんなタイプの糖尿病で効果があるのか、などを研究中です。
グルコキナーゼ(GCK)活性化薬
グルコキナーゼ(GCK)は、細胞内で取り込んだブドウ糖を代謝する際に中心的な役割をする酵素です。この酵素の活性を高めるのがこの薬です。 
1すい臓のインスリン分泌細胞では、GCKが活性化することで糖の刺激が細胞内で伝わりやすくなりインスリン分泌量が増えること
2肝臓においては、GCKが活性化することでインスリン刺激による糖の取り込み、糖からのグリコーゲンの合成が増加します いいかえるとインスリン抵抗性が改善します。
このようにインスリンをよくだすようにして、その一方でインスリンの効きを良くするという薬です 今後の薬としての開発の進展が待たれます。
吸入式インスリン
現在鋭意開発中、専用の吸入器を使用し、霧状になったインスリンを吸入、気管支粘膜からインスリンを体内に取り込み作用する。以前は鼻粘膜から吸収されるタイプのものの開発が試みられたがとん挫しています。 しかしこの吸入インスリンプロジェクトは中止になったようです。
開発中の糖尿病合併の予防薬

アミノグアジニン
糖化最終産物(AGE)の合成阻止効果のある薬、糖尿病合併症の原因ではないかと考えられているAGEを押さえることにより合併症の予防薬としての期待が集まる薬剤。市場に出るのは早くて数年先。
PKCベータ阻害剤
糖尿病合併症の原因の一つであるPKCの活性を抑える薬剤。現在欧米で治験中である

薬の飲み方のよくある質問

Q1:薬を飲み忘れた場合
A1:食後すぐに気がついたときはその時点で飲んでください。朝食前後または朝夕食前後の薬で、朝食時に飲み忘れた場合は昼食時に服用してもかまいません。朝食を抜いた時も昼食時に服用してください。しかし1回分忘れたからといって2回分をまとめて飲まないようにしましょう。
Q2:薬の副作用は?
A2:αグルコシダーゼ阻害薬 腹部膨満、下痢、放屁など、ごくまれに肝障害
ビグナイド剤 食指不振、まれに乳酸アシドーシス
SU剤 遷延性低血糖、肥満増強
インスリン感受性改善剤 浮腫、肥満増強、心不全、骨粗鬆症、重篤な肝機能障害の可能性(アクトスでは報告なし)
DPP-4阻害薬 便秘、吐き気など消化器症状


低血糖について
Q3:低血糖とは
A3:糖尿病の薬は血糖値を正常域にまで下げるために服用するわけですがときどき血糖値が正常以下になります。これが低血糖状態です。血糖値が下がりするとこん睡をおこすこともありますが普通はその前に血糖値をあげようとアドレナリンなどのホルモンが分泌されます。 このアドレナリンによる症状がいわゆる低血糖症状です。放置していると意識がなくなるこん睡状態になります。
Q4:低血糖症状とは
A4:いらいら、動機、冷や汗、手のふるえなど
Q5:いつ低血糖が起こりやすいか?
A5:低血糖が起こりやすい時間帯は昼食前、夕食前です。
いつもより食べる量が少なかったり、いつもよりよく動いた場合、また、食事時間がいつもより遅れた場合などに起こりやすいようです。 旅行などで食事時間が不規則になる場合は必ず甘いものを用意しておきましょう。普通にしていても起こるようなら、薬を減らしていけるサインですが、自己判断で減量せずにご相談ください。
Q6:低血糖がおこったら
A6:角砂糖1個、スティックシュガー1本、キャンディ1個、缶コーヒー半分程度で十分です。 あんパンを2個や、チョコレートをまるまる1枚などと取りすぎると血糖値があがりすぎるので注意しましょう。
ただし、ベイスン、グルコバイを服用されている場合はブドウ糖そのものを飲まないと低血糖からの回復がおくれる可能性がありますので専用のブドウ糖を用意しておきましょう。 

1.糖尿病は成人病のスーパーマーケット

高血糖(おおまかにいってHbA1cで7%以上、空腹時血糖で140mg/dl以上)を放置していると必ずといっていいほど色々な障害が出現します。また、HbA1c8%以上、空腹時血糖170mg/dl以上の不良なコントロール状態ではそれら障害は重症化すると考えられます。 これらの障害を慢性の糖尿病合併症と呼びます。いずれも障害が完成するまであまり自覚症状はありません。ですから、定期的に各検査を受け合併症の有無を調べることが大切です。 糖尿病治療の目標は以下に述べる合併症の予防にあるのです。しかし、これらの合併症は慢性に進行し早いもので数年から20年たって完成します。

conplications2.gif 糖尿病の合併症は細小血管障害の糖尿病に特有な3大合併症と大血管障害の動脈硬化症(糖尿病は重要な危険因子の1つ)の4つが知られています。

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2.網膜症

ndr-92.jpg
上は正常の眼底写真です。
網膜とは、下の図のように眼をカメラに例えるとフィルムの部分にあたります。正常な網膜は左のような形をしています。全体は一様にオレンジ色で中心にやや暗い色のエリアがあります。これを黄斑といい、視力の70%はこの部分で感じているといわれる大切なエリアです。 写真右の白く光る円状の部分は視神経乳頭といい網膜全体に広がっている視神経が一本の束になって脳につながっている部分です。またそこから赤い動静脈が上と下に走っています。
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sdr-2-92.gif 単純性網膜症
高血糖が続くと網膜に網の目のように走っている毛細血管が脆くなり、点状の小さな出血や蛋白などが漏れ白いシミが出現します。単純性網膜症といいます。この時点では視力低下なども認められません。
image42-92.gif 増殖性網膜症
さらに血管の障害が進行すると網膜の酸欠状態により新生血管が出来てきます。この新生血管は非常に脆く大出血を起こす原因となります。これを増殖性網膜症といいます。この時点でも視力低下などの自覚症状は認められず、大出血や網膜剥離が起きて初めて視力低下を感じますが時すでに遅しで、こうなってしまうと手術をしても必ずしも視力の回復は望めません。現在、事故を含めて後天的に視力を失い盲目になられる患者さんの1/3は糖尿病による失明で、年間3000人に達しています。

3.腎症

腎臓は血液中に溜まる各種老廃物や有毒物質をろ過し尿に捨てる大切な臓器です。この臓器が高血糖にさらされると細胞が徐々に傷害され尿に蛋白がでるようになります。その程度がだんだんひどくなると高血圧が出現、廃物や有毒物質をろ過する力が失われれ尿毒症になります。こうなると人工透析にて血液をきれいにしてやらなければならなくなります。現在、毎年約12000人の糖尿病患者さんが新たに透析療法を開始されており、全透析導入者の37%以上を占めています。

4.神経障害

手足のしびれから始まる障害です。最後に痛みなどがわからない状態になると、下に示す足の病変などが加速度的にどんどん進行します。

5.足の病変(神経障害、大血管障害、感染、壊疽)

高血糖の持続により、動脈硬化が進行すると足の血管が詰まり足の先が壊死を起こします。その際に足先の些細なキズからバイ菌が進入するとあっというまに写真の様な状態になります。このような状態になる人は神経も障害されており足がしびれて全く痛みを感じないことが多く病態を悪化させる一因になっています。(この方はすねのところで足を切断しました。) foot-3.gif

6.脳梗塞

高血糖により動脈硬化症が進むと脳の栄養動脈が詰まり血流が途絶えます。その結果、脳細胞が死に麻痺が起こります。多くの場合、半身マヒです。また、失語症を伴う場合もあります。脳梗塞を起こしたあとは痴呆が進みやすいといえます。

7.狭心症・心筋梗塞

 

心臓の栄養血管に動脈硬化症が進むと血液の流れが途絶えます。その結果、心臓の筋肉細胞が死んでしまいます。 血管がつまった時は左胸部から左腕にかけて激痛がはしります。お年寄りの場合は痛みがはっきりしない場合もあるので要注意です。まさに致命的な合併症です。

右上:血管内腔が動脈硬化をおこした血管で内腔が平滑筋やコレステロールの塊で狭くなった状態になっています。

artery-sclero4.gif

脳梗塞・心筋梗塞は糖尿病だけではなく高脂血症、高血圧(その上流には内臓脂肪肥満が存在)、喫煙などの危険因子の集積でそのリスクは跳ね上がります。

8.糖尿病の急性合併症

糖尿病性昏睡(高血糖性)
異常な高血糖が出現すると脱水状態になり、これが血糖を押上げるといった悪循環が出現、昏睡状態になることがあります。この昏睡には2つのタイプがあります。
ケトアシドーシス性昏睡(DKAC)
インスリンの完全な欠乏状態になり糖をエネルギーとして利用できなくなり体内の脂肪が代替エネルギーとして不完全燃焼をおこし、血液中にケトン体というゴミが溜まり血液が酸性に傾き昏睡状態になる。脳浮腫なども引き起こされ生命の危険もあります。
非ケトン性高浸透圧性昏睡(NKHC)
インスリンが出ている糖尿病の場合でも手術、感染症、外傷などのストレスで脱水と高血糖状態が出現する場合もあります。この場合はケトン体は増えることなく血液も中性です。

DKAC NKHC
病因 インスリンの絶対的欠乏 相対的なインスリン欠乏と高浸透圧
検査データ BS400位でも発症、Na, K低値、ケトン体上昇、アシドーシス(+) 著明な高血糖しばしば1000mg/dl以上、高Na血症、ケトン体陰性。アシドーシス(-)
臨床症状 嘔吐、腹痛に始まり、意識混濁、特徴的なクスマル大呼吸 腹部症状やクスマル呼吸(-)、血漿浸透圧上昇
好発患者像 1型糖尿病 2型の高齢者、術後や感染症罹患時

糖尿病性昏睡(低血糖性)
インスリン治療、経口薬治療中に出現
交感神経症状(初期)  イライラ、冷や汗、動悸、めまい、著明な空腹感
中枢神経症状  意識混濁、昏睡

低血糖について

低血糖とは
血糖値は常に80から100ですが、これが60以下になる状態を言います。特に糖尿病の治療でインスリン注射や薬(特にすSU薬などインスリン分泌を刺激する薬を使っている場合は、低血糖に注意する必要があります。また、薬を使っていない糖尿病や予備群の人にも、症状は程度は比較的軽いながら、低血糖の症状が出ることがあります。
低血糖症状
低血糖の症状は、冷や汗、震え、イライラ感などの交感神経による症状と、脳のエネルギー不足(脳のエネルギー源は、血液中のブドウ糖のみです)による症状で、空腹感や倦怠感を覚え、ひどくなると意識がもうろうとして昏睡(こんすい)にいたります。血糖値が正常(80〜100)を下回るとインスリン拮抗ホルモンといわれるホルモンが分泌され、その結果、肝臓からブドウ糖が放出されて血糖値が上昇します。インスリン拮抗ホルモンとはすい臓から出るグルカゴン、副腎から出るアドレナリン、副腎ホルモン、下垂体から出る成長ホルモンがありますが、特に大切なのがグルカゴンとアドレナリンの2つです。実は低血糖で感じる症状の多くはこのアドレナリンにより刺激された交感神経の症状(イライラ、倦怠感など)なのです。
低血糖はなぜ起こる
・薬を服用している場合
いつもより食べる量が少ない、運動量が多い、食事時間が遅くなったなどのときに薬の効果が強く出て血糖値が下がりすぎた状態です。薬の量は個人の日頃の食事量や食事時間、運動量により決まりますので、平常よりそのリズムが狂うときに出やすく、特に、昼食前や夕食前に起こりやすくなります。 旅行などで食事時間が不規則になる場合は必ず甘いものを用意しておきましょう。 
普通にしていても起こるようなら、薬を減らしていけるサインですが、自己判断で減量せずにご相談ください。
・薬を服用していない場合
糖尿病やその予備群の人はインスリンが分泌される量が少なくなっているだけでなく、分泌するタイミングにずれが生じて遅くなっています。そのためにこれを反応性低血糖と言い、食後数時間で出ることが多くあります。軽い場合はあまり症状がなくて空腹感だけの場合もあり、間食を食べてしまうことが原因であることも珍しくありません。
低血糖がおこったら
症状が現れても慌てないことです。ブドウ糖1グラムで血糖値は5ミリグラム/デシリットル上昇すると言われています。7グラムのアメ玉で35ミリグラム/デシリットルの血糖値が上昇します。低血糖だと思ってガツガツ食べると、その後は高血糖になってしまいます。できるだけ落ち着いて行動しましょう。食後の高血糖とその後の低血糖で間食をし、また血糖が上がるという山あり谷ありのように血糖が動揺するのはよくありません。
具体的には角砂糖1個、スティックシュガー1本、キャンディ1個、缶コーヒー半分程度で十分です。 あんパンを2個や、チョコレートをまるまる1枚などと取りすぎると血糖値があがりすぎるので注意しましょう。
ただし、ベイスン、グルコバイを服用されている場合はブドウ糖そのものを飲まないと低血糖からの回復がおくれる可能性がありますので専用のブドウ糖を用意しておきましょう。またメルビン、アクトスを単独で使用している場合は低血糖はおこりません

糖尿病食用レトルト食品

糖尿病食セットが各社からでています。
1食320kcalの一汁二菜のメニューです。レトルト食品としては味はけっこういけます。これを毎日食べる訳にはいけませんが家庭に常備しておくとなにかと便利でしょう。 単身赴任の糖尿病患者さんにはぴったり。

低カロリーインスタント食品

レトルト(一品70〜230kcal)

糖尿病用宅配食

家庭で食事療法を始めるときに便利。カロリー計算された材料をあらかじめカットした食材を宅配してもらうもの。難点は自分で作らないといけないこと。しかしバランスととれた食事の作り方を勉強できます。この宅配食を用いることにより糖尿病コントロール状態が良くなったとの報告もあります。(松葉郁郎,PRACTICE,12,373-376, 1995)

  

糖尿病用宅配弁当

作るのは面倒という方には新たに糖尿病食宅配弁当ができました。 主食(ごはん)は自分で用意すれば、ややカロリーは少な目ですが毎日200kcalの副食になります。

特定保健用食品

特定保健用食品てどんなもの?
健康食品との違いは?健康食品の定義には特に決められた基準はありません。たとえばクロレラ食品、酵母食品など、その食品の効果についてはきっちりした裏付けはなくまったく効果のないものも多いようです。 しかし特定保健用食品は厚生省がその食品の効果が科学的に評価され、「健康にどのように有用であるかを表示してもよい」と許可した食品です。その中には、鉄分を多く含み貧血に有用なキャンデーやジュース、カルシウムを多く含むビスケットやキャンデー、糖尿病関連では食物繊維を多く含んだお茶があります。
しかし有用ではあってもそれ単独で大きな効果は期待できません。それほど明らかな効果を有するものであればそれは薬品ということになります。あくまでも補助食品であり、過大な期待は禁物です。

ダイエット和菓子

彩和菓子
神奈川県横浜の和菓子屋さんのグループが糖尿病専門医の指導のもとに開発したダイエット和菓子です。
カロリーを30%カットし食物繊維を1個に7g以上含有するもので通常の和菓子と甘さ、食感は変わらず食後の血糖の上がりを抑えられる優れものです。効果のほどは糖尿病専門クリニックにての試験でお墨付きです。

従来の和菓子とのカロリー比較 従来品kcal 彩和菓子kcal
利休饅頭 40g 110 79
きんつば 50g 130 94
どらやき 60g 189 132
くずもち 50g 115 81
ねりきり 40g 110 76

全国へクール宅急便で発送可能とのこと
連絡先:彩の会 代表 「寿々木」 矢部代表 電話 045-352-6345

低カロリーアイスクリーム

グリコから80kcalのカロリーコントロールアイスクリームが各味で発売されています。試食しましたが結構おいしかったです。
低糖質ケーキ:シャトレーゼ
低糖質パン:ローソン

シックディルールについて

糖尿病患者さんの場合は、日頃の風邪、下痢、腹痛などちょっとした病気も油断禁物です。特に経口剤やインスリン治療中は急激にコントロールが悪化したり、場合によっては昏睡に陥ったりすることがあります。そうならないようにする工夫が「シックデイルール」です。
1)病気のときにはストレスホルモン(副腎ホルモンやアドレナリン)がたくさんでます。 これらのストレスホルモンはインスリンの働きを抑え血糖をあげる作用があります
2)下痢や発熱があると脱水になり易く血液が濃縮されます。血液が濃縮されるとその結果、血糖値もあがります。食べれないのだけの理由で経口薬やインスリンをを自己中断してしまうのはかえって危険です。以下の様な状況のときは連絡をしてください
1.まったく食事がとれない
2.下痢や嘔吐がつづく
3.高熱がつづく
4.尿検査用紙を持っている場合 尿ケトンが強陽性となる
5.尿検査用紙を持っている場合 尿糖が強陽性となる
シックディの具体的な対応の例

血糖降下剤を服用している場合

食事の摂取量

薬の服用量

全量

いつもの量

半分

半分に
(2錠を1錠など)
食事不能の場合

尿ケトン陰性

服薬中止

尿ケトン陽性

インスリン補給の必要性あり(受診を)
インスリン治療中の場合

食事の摂取量

注射量

全量

いつもの量

半分

1/2量

食事不能

1/3量

シックデイの食事について
1)糖質を主体として消化吸収のよいものを
2)水分や電解質をしっかり補給 (脱水予防)
3)味噌汁、スープ、果汁などを取る

注記事項

このページで紹介する商品はDr MOGが個人的な好みで選んだものです。
メーカーとの関係は一切ございません。

食事療法の目的

糖尿病治療の基本は食事療法です。これは、腎臓病食や減塩食などの病気のための制限食ではありません。いいかえるとバランスの取れた健康食です。
エネルギー摂取を制限することにより
・すい臓のインスリン分泌の負担を軽減させる体脂肪合成を抑制し肥満の改善
・インスリン抵抗性の改善
・血糖の改善
・中性脂肪、コレステロール、血圧の改善

一日にどれだけのエネルギーが必要なのでしょうか?

 

基礎代謝量

安静時代謝 RMR

じっと安静に寝ていても消費するエネルギー(心拍、呼吸、胃腸の動きなどによるエネルギー消費量)体重、身長、年齢、性別などで大体決まっている

食事の発熱効果

食べたカロリーの約10%はこれで消費される

適応性の発熱効果

寒さや食べ過ぎた際に褐色脂肪などでエネルギーを産生するエネルギー

活動代謝量

運動の発熱効果

筋肉運動することにより消費するエネルギー



1日の消費エネルギー量は基礎代謝量と活動代謝量との合計です。
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糖尿病の場合は以下の計算式を用います。 

標準体重x25kcal/kg

軽作業

一日必要カロリー=

標準体重x30kcal/kg

中作業

標準体重x35kcal/kg

重作業

標準体重:身長から割り出す理想体重のこと
標準体重=(身長−100)x0.9

運動の効果とは

運動の効用は運動時のエネルギー消費だけでなく、心肺機能の向上、ブドウ糖利用の増加、インスリン感受性の改善、筋肉量増加による基礎代謝量の上昇などいわゆる慢性効果がより重要です。

運動することの有用性

1 血糖値の改善

2 インスリン感受性の改善

3 中性脂肪やコレステロールが改善

4 血圧の改善

5 心肺機能の改善

6 筋肉量の増加

7 内臓脂肪量の減少

8 骨量の減少防止

さらに、2次的な効果として

1 ストレス解消

2 頻尿改善

3 便秘解消

4 腰痛改善

5 不眠解消

6 基礎代謝量増加

7 認知症の予防

 

どんな食生活がいいのでしょうか?

まず、これはダメという悪い食生活のパターンを示します。
  1)夕食の比重が高い
  2)食品の偏りが多い
  3)食事時間が不規則である
  4)朝食を抜くことが多い
  5)日によって食べる量の差が大きい
  6)調理済食品が多い
  7)お菓子類が多い
  8)残り物などもったいないと思い食べてしまう
  9)テレビを見たりおしゃべりをしたり、ながら食いをする
  10)早食いである
   
こころあたりはありませんか?
よい食生活のパターンは次のとおりです。
  1)3食のバランスは等分にする(夕食を軽く)
  2)食事時間は規則正しく
  3)3大栄養素を偏りなく補給する(主食に片寄らない)
  4)食事は落ち着いて良く噛んで食べる(満腹中枢を刺激する

運動のデメリットは?

運動はブドウ糖を酸素で燃焼させエネルギーとして筋肉の収縮・弛緩 を起こすことです。

その際に体の中に酸化ストレスが生じやすく、特に激しい運動は、 強い酸化ストレスを引き起こされます。これにより血管の内皮細胞などが障害され血栓ができやすい状態でもあります。

運動をする場合は、運動の利益がリスクを上回ることが大前提です。糖尿病患者さんは高血圧、脂質異常、喫煙などの危険因子の重積した肥満糖尿病患者では血糖コントロールが良好でも水面下で動脈硬化症が進展している可能性があり、突然強い運動をした場合、思わぬ心血管事故が起こる可能性が高いといわれています。フィットネスなどで中等度以上の運動をする場合はトレーナーにつき、またそのような運動を始める時にはかかりつけ医に相談、メディカルチェックをうけるようにしましょう。

ウォーキングのような軽い運動でも、冬の早朝は避け、体調の悪いときは無理をせず休むようにしましょう。 雨にも負けず風にも負けず でなくてもいいのです。安全第一です。

心血管系

  1. 虚血性心血管障害(しばしば無症状)と不整脈
  2. 運動中の過度の血圧上昇、運動後の起立性低血圧
  3. 細小血管系
  4. 網膜出血
  5. 蛋白尿増加
  6. 細小血管合併症の悪化

代謝系

  1. 高血糖、ケトーシスの悪化
  2. 薬物治療中の低血糖

筋骨格系や外傷

  1. 足の潰瘍(神経障害の合併例)
  2. 神経障害に関連した整形外科的外傷
  3. 変形性関節疾患の悪化
  4. 眼の外傷

運動療法の実際

最近は「健康づくりのための運動指針2006」が策定され、運動量の指標として METS(メッツ)/EX (エクササイズ)の概念が導入されています。従来の消費カロリーベースのものより計算などが簡便になっています。

METSはmetabolic equivalentsの略で身体活動の強さを、安静時の何倍に相当するかで表す単位で、座って安静にしている状態が1METS、普通歩行が3METSに相当する。身体活動量を表す単位(エクササイズ;EX)は、身体活動強度(METS)に実施時間(時)乗じたものであり、より強い身体活動ほど短い時間で1EXです。

目標は、身体活動量として週に23EX以上の活発な身体活動(運動・生活活動)を行い、そのうち4EX以上の活発な運動を行うことであり、活発な身体活動とは、3METS以上とされています。 なお1EXのエネルギー消費量(kcal)は1.05×EX(mets・hr)×体重(kg)の簡易式で計算できます

バランスのとれた食事とは

3大栄養素= (糖質 タンパク質 脂質)


糖質

タンパク質

脂質

(1g=4kcal)

(1g=4kcal)

(1g=9kcal)

多糖類(甘くない)

動物性

飽和脂肪酸
でんぷん・炭水化物・米・パン・うどん・豆 牛肉・豚肉・鶏肉・魚 動物性脂肪に多い
(エネルギー源になる)

少糖類(甘い)

植物性

不飽和脂肪酸
乳糖・蔗糖・砂糖・果物・水飴 大豆 魚油や植物性脂肪に多い (動脈硬化症を予防)

単糖類(甘い)

乳製品
ブドウ糖・果物・蜂蜜 牛乳・チーズ

特に糖尿病の場合は3大栄養素を以下のバランスに留意してとりましょう


糖質

タンパク質

脂質

50%〜60%

1〜112g/Kg(体重)

残り
甘い単純糖質よりも甘くない米、小麦由来の食品を中心にする 動物性と植物性をとりまぜて(植物性蛋白質を多く含む食品は脂質が少なくいいのですが、蛋白価が低いので必須アミノ酸が不足しないように動物性蛋白質もとりましょう) 植物性油脂や魚脂に含まれる不飽和脂肪酸を多くとるようにしましょう

そのためには食品交換表を自在につかう必要があります。その人の生活に添った栄養士さんによる個別指導が必要です。 自己流の食事療法は無駄も多く長続きしないでしょう。

有酸素運動(持久力運動)

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酸素を十分取り込みながら血液中のエネルギー源である血糖を燃やし、またその後は皮下脂肪などを取くずしながらエネルギーの補給を行う運動です。 (例:ジョギング、歩行、エアロビクス、ダンスなど)
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無酸素運動(短時間に最大の力を出しきる運動)

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瞬発力を必要とする運動が中心で、酸素を利用せず筋肉内にためているグリコーゲンが主なエネルギー源とします。(例:重量上げ、100m短距離走)
糖尿病の運動療法としては有酸素運動がお勧めです。
無酸素運動は、血圧が上昇しやすく心臓に負担をかけるので要注意です。
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糖尿病の運動療法としては有酸素運動がお勧めです。
無酸素運動は、血圧が上昇しやすく心臓に負担をかけるので要注意です。

食品交換表

その中から食べるものをバランス良く選ぶためにすべての食品を6つのグループに分類したものです。

表1
穀類・芋類・糖質の多い野菜・種実
(糖質を主として 供給する食品群)

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表2
果実類
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表3
肉・魚・卵・ 大豆製品・チーズ
(蛋白質を主として供給する食品群)

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表4
乳製品

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表5
油脂類・多脂性食品
(脂質を主として供給する食品群)

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表6
野菜・海藻・きのこ類(ビタミン・ミネラルを主として
供給する食品群)

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付録 調味料

 

どれだけ運動すればいいのでしょうか?

次に示す程度の強さの運動量が適当です。
主観的運動強度なら、運動をしながら隣の人と会話ができ、あまり息が上がらない程度。なおかつ、30分運動するとシャツを替えたくなるほど汗をかく程度です。
運動中の脈拍があがりすぎないようにしましょう。心拍数をめやすにしましょう。
客観的運動強度の安全域:
脈拍=(220-年齢)X0.7 以下
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運動持続時間
最低、1日に160kcal(お茶碗1杯のご飯のカロリー)を運動で消費するようにしましょう。徐々に時間を増やしていき
有酸素運動: 160kcalと
筋力増強運動: 80kcalの計240kcalを目指しましょう。
各運動の運動量を表にしめします

運動度
種目
60kcal消費する
に必要な時間(分) 
歩行
44
ラジオ体操
54
自転車
54
ボーリング
36
中 
階段のぼり
30
ジョギング
30
ダンス
28
床掃除
28
なわとび 
28
ランニング
24
バトミントン
24
テニス
22
平泳ぎ
20
バレーボール
16

Q:いつすればいいのでしょうか?
A:早朝や空腹時よりも食後1〜2時間がベターです。
糖尿病薬、インスリン治療中の方は運動の際は低血糖に注意しましょう。
Q:どのくらいの頻度でやればいいのでしょうか?
A:できれば毎日、少なくとも週3回以上行なうことをお勧めします。
トレーニングのメモリー効果は3日間です

外食/アルコールについて

1)外食についての注意点

  • 同じ種類のものを選ばない(ラーメンライスなどはダメ)
  • 油を使った食品に注意
  • 薄味の物を選ぶ
  • 主食の量は初めから取り置く
  • 3食のバランスを考えて
  • 今日だけはとの考えは捨てる

2)アルコールについて
基本的に糖尿病患者さんでは禁酒が望ましいのですが以下の条件のときには少量なら問題ないでしょう。
アルコール許可の条件

  • 血糖コントロールが良い
  • 肥満していない
  • 肝機能正常
  • 合併症がない
  • 薬物療法を受けていない
  • 飲み始めても止る人

安全な飲酒量の目安 (2単位まで)
日本酒:0.8合
ビール:中ビン1本
ワイン:グラス3杯
焼酎:0.6合/お湯割2杯
ウイスキー:ダブル1杯 (160kcal)

正しい歩き方

1)前方を見て
2)背筋を伸ばして
3)首、肩、腕の力を抜いて
4)腕は大きく振って
5)つま先立ち動作で足をあげる
6)着地はかかとから
7)速歩(70〜80m/分)
8)脈拍(90〜100回/分)

 

ウォーキングフォーム

運動を始める前には必ずメディカルチェックを受けましょう

突然、運動を始めるのは危険です。
心臓、肺機能などのチェックを受けるようにしましょう。
また、糖尿病網膜症や糖尿病腎症などの合併症をもつ方は特に要注意です。

メディカルチェックでは負荷心電図、心エコー、ABIなどの循環器系検査の実施が望ましいですがなかなか全部はできません

必ず主治医と相談の上で始めるようにしましょう。

UKPDS(United Kingdom Prospective Diabetes Study)

英国において、インスリン非依存型糖尿病(NIDDM)を対象に種々の治療法を割り付け、10年間にわたり治療し、その間の糖尿病合併症の進展、糖尿病に関連する死亡率などについて、血糖コントロールの良否、糖尿病治療法別に詳細に検討した研究。対象:未治療のNIDDM患者 4209名研究1:対象のうち3867名(空腹時血糖108〜270mg/dl)を3ヶ月間食事療法を行い、その後無作為に以下のように通常の緩やかな治療群と厳格に治療する群に分け、10年後の糖尿病合併症の発症、進展率を比較する。

通常の緩やかな治療群
1138名
(食事療法単独で治療開始)

厳格な治療群
2729名
(薬物療法で治療開始)

食事療法群
436名

 SU剤群 
370名

インスリン群
259名

メトホルミン群
73名

SU剤群
1573名

インスリン群
1156名

治療方針
基本的には食事療法でいくが、
空腹時血糖 270mg/dl以上
または高血糖の症状出現時に薬物療法を追加する

メトホルミン追加
268名

インスリン追加
339名

  SU単独  
966名

治療方針
空腹時血糖108mg/dl以下を目標

10年間のHbA1c
中央値 7.9%

10年間のHbA1c
中央値 7.0%

体重 2.5kg増加

体重 4.2から6.5kg増加

HbA1cが7.9%の緩やか治療群に比べHbA1c7.0%の厳格治療群における以下の合併症イベントの発症率はそれぞれ有意に低値を示した。
10年間の糖尿病に関連した死亡 -10%
心筋梗塞発生率        -16%
細血管合併症の進展      -25%
研究2:肥満NIDDMを対象に食事療法、メトフォルミン、SU剤療法の糖尿病合併症の進展、糖尿病関連死亡率への影響について10年間の追跡研究
対象:1704名の肥満NIDDM患者(FBS108〜270mg/dl)

753名

951名

食事療法群
411名

メトフォルミン群
342名

クロルプロパミド群
265名

グリベンクラミド群
277名

インスリン群
409名

HbA1c
中央値
8.0%

HbA1c
中央値
7.4%

 

メトフォルミン群では食事療法群にくらべ10年後の糖尿病関連の死亡は42%減少した
糖尿病臨床的エンドポイントに至る危険性は32%減少した。
UKPDSのまとめ
HbA1cの改善は糖尿病合併症の発症・進展を抑える
UKPDS2.gif
UKPDS1.gif
さらにこの試験が終了後も観察研究は継続されました(post-trial monitoring)
試験終了後、両群のHbA1cの差はなくなってしましました。
UKPDSPTM1.jpg
にもかからず元強化療法群ではすべての合併症を含め9 % (p<0.05) 抑制、細小血管障害に限ると24% (p<0.01)もリスクの低下が認められました。 また「心筋梗塞」に対しでも15% (p<0.02) の, 全死亡率についても13% (p<0.01) のリスク低下を認められました。 ukpdsptm2.jpg

糖尿病のコントロールと合併症に関する研究DCCT/EDIC

米国で行われた1型糖尿病患者を対象にした血糖コントロールと合併症進展に関する大規模スタディ
対象は糖尿病早期腎症を有しない1型糖尿病患者1441 例を対象に1日1-2回のインスリンを投与する従来療法群と,1日3回以上のインスリン注射を施行する強化療法群に分け,平均6.5年間の観察期間中における糖尿病血管合併症の発症・進展の程度を調査しました。
結果は、強化療法群(HbA1c7%以下)は従来療法群(HbA1c9%)の発症危険率を76%低下、網膜症の悪化は54% 抑制、早期腎症の発症を39%,顕性腎症の発症を54% ,神経障害の発症を60% それぞれ抑制できました。そして血糖コントロールを正常に近づければ近づけるほど合併症が低減されることが明らかになりました。一方,大血管症(心筋梗塞、脳梗塞)については残念ながら両群に差は認められなかったという結果でした。
それに引き続くEDICでは,1341例を対象とし、DCCT 時に従来療法であったものも強化療法に切り替え、さらに数年治療を継続,合併症の進展度を当初より強化療法群と対比しながら追跡調査しました。
11年後の試験終了時で両群聞の平均HbAlc 値はそれぞれ8% と差はなくなっていました,早期からの強化療法による腎症、網膜症、神経障害の合併症の抑制効果が持続しただけでなく、当初差がなかった大血管障害の発症(非致死性心筋梗塞,または脳卒中,心血管死など)リスクは従来療法群に比し42%も抑制されていました。 糖尿病早期にしっかり、厳格に血糖をコントロールすることが腎症、網膜症の発症をその後も抑制し、また長期にわたり大血管障害のリスクを抑えることにつながることが明らかになりました。
UKPDSでも同じような効果が認められており これらをレガシーエフェクト(遺産効果)、メタボリックメモリー(代謝記憶)と呼ぶようになりました。 

日本の熊本スタディ

対象:日本人のインスリン非依存型糖尿病 110人
デザイン:網膜症と腎症を中心に、
合併症のない人に合併症がでるか?(1次予防群)
軽症の合併症を持つ人が合併症が進まないか(2次予防群)を6年間にわたり追跡した。
対比:強化療法(頻回インスリン注射)vs 従来治療(インスリン1−2回注射)強化療法ではHbA1c<6.5%、空腹時血糖<110mg/dl、食後2時間<180mg/dl)のコントロールを維持するよう努めた。

 

強化療法

通常療法

網膜症の出現(1次予防)


7.7%

32%

網膜症の悪化(2次予防)


19.2%

44%

腎症の出現(1次予防)


7.7%

28%

腎症の悪化(2次予防)


11.5%

32%

腎症は尿中微量アルブミン排泄量で判定
kumamoto.jpg
結論:インスリン非依存型糖尿病でも頻回インスリン注射で血糖コントロールをできる限り正常に近づけることが合併症の引き起こさないということが判明した。
糖尿病合併症治療薬についての大規模多施設臨床研究報告
日本ではまだ未承認であるが、欧米では糖尿病合併症の治療薬であるAGE阻害薬(Pimagedine)の糖尿病性腎症の治療に関する研究が行われており、その研究結果の一部が報告されている。

1.糖尿病発症の合併メカニズム

2.糖尿病性腎症について

糖尿病性腎症の臨床経過(以下のようなタイムスケールで進行する)
これは糖尿病の発症時期がはっきりした1型糖尿病のケースであるが2型糖尿病もほぼ同様の経過をたどると考えられる。

病期 検査値異常 自覚症状 病態

第1期

(腎症前期)


正常

なし

GFR正常

第2期

(早期腎症)


尿試験紙法蛋白(-)尿中微量アルブミン

分泌増加

30~300mg/gCr


なし

GFR正常~増加

第3期A

(顕性腎症早期)


尿蛋白陽性

なし

GFR正常~増加

第3期B

(顕性腎症後期)


尿蛋白陽性

(1g/日以上)


浮腫、高血圧

GFR低下

第4期

(腎不全期)


血清Cr2.0以上

浮腫、高血圧

食指不振

全身倦怠


GFR著明に低下

第5期

(尿毒症期)


透析療法導入

尿毒症症状

GFR 0

糸球体の働き: 腎臓の糸球体の役割は血液の濾過、血液中の老廃物や有害な物質を取り除き尿の形で体外に排泄する。糸球体は編み目の様な構造をしており正常の状態では、赤血球や蛋白など大きな分子は、糸球体の編み目を通過することなく尿にはでない。一方、水成分や尿素窒素などの老廃物は分子の大きさが小さく尿の方へと濾される。高血糖が持続すると糸球体の機能を障害、この濾過する能力が低下するのが腎症である。
初期は血液中のアルブミンが少量ではあるが糸球体から尿へと漏れだす。この時期は従来の尿検査ではわからなかったが、最近は微量アルブミンを測定できるようになり、早期に腎症の存在をキャッチできるようになった。 その時期が過ぎるとさまざまな蛋白が漏れだしその量の多くなり簡単な試験紙法による尿検査でもわかるようになる。さらに進行すると、糸球体の破壊が進み糸球体からの尿毒物質の排泄が困難になり、腎不全状態となる。
GFR:糸球体濾過量 腎臓が尿素窒素などの血液中の不要物質(ゴミ)を濾過する量で腎臓の機能を表す指標、通常は100以上である。

腎症発症のメカニズム
高血糖に起因する細胞内のソルビトール蓄積、PKC活性の亢進、サイトカインのTGFβ産生増加、またグリケーションによるAGEの蓄積などにより、腎糸球体近傍に存在するメサンギウム細胞の細胞傷害、細胞外基質の増加が起こり、糸球体硬化、腎機能障害が惹起されると考えられる。
メンサギウム細胞:腎糸球体細胞の周りに存在し、糸球体濾過量を調節している。
TGFβ: サイトカインの一つ 生体内に広く存在し多様な生理活性(組織の修復、細胞外基質の亢進、分解抑制など)を有する。組織の修復には必要なものであるが過剰になると上記の様な細胞障害性を示すと考えられる。

3.糖尿病性網膜症について

網膜症の進行の分類にはいろいろなものがあるが、比較的単純で臨床的に有用なものが以下の分類である。これらを診断するには蛍光眼底検査が不可欠である。
(1)進行の遅い非増殖性網膜症
=単純性網膜症(SDR:simple diabetic retinopathy)
点状出血、硬性白斑、動脈瘤
このステージでは血糖コントロールにより点状出血点消失、改善することができる。
(2)進行性で視力の予後が不良である増殖性網膜症
=前増殖性網膜症(prePDR:pre proliferative diabetic retinopathy)
SDRの所見に綿花様白斑、網膜内細小血管異常、静脈異常を伴う
増殖性網膜症(PDR:proliferative diabetic retinopathy)
新生血管増殖、硝子体出血
特に黄班部に病変を認めるものはSDRでも視力低下を来すので、糖尿病性黄班症といい、局所的光凝固療法の適応となる。浮腫性病変、虚血性病変、網膜色素上皮性病変に分類される。

網膜症とは、高血糖により引き起こされる網膜の異常な血管新生とその新生血管の破壊による網膜出血、網膜剥離である。
腎症と同じ様なメカニズムで血管の機能障害が生じその結果、非常に脆い血管新生が生じる。この新生血管が生じる時期を前増殖性(pre-PDR)、増殖性網膜症(PDR)という。

4.細血管障害の発症メカニズム

3大糖尿病合併症の病因はいずれも細血管障害である。この細血管障害がどのように慢性の高血糖により惹起されるのか?は必ずしも明らかになっていないが、以下に述べるような仮説が考えられている。これらの異常が単独で血管障害を引き起こしているのではなく、複数のメカニズムが関与していると考えられる。いずれにしても重要な要因は高血糖であることは共通している。高血糖による細胞内代謝系の障害の生じる部位、すなわち、腎臓のメサンギウム細胞、網膜の細胞、神経細胞などでは細胞内へのブドウ糖取り込みはインスリン非依存性に行われることが知られている。すなわち、インスリンの不足状態でも血液中のブドウ糖濃度が上昇すれば細胞内のブドウ糖濃度が容易に上昇する。細胞内に過剰に取り込まれた糖は解糖系酵素で代謝されるが、それでは間に合わずいくつかのバイパス経路を通って代謝される。このバイパス経路で代謝される際に細胞障害が惹起されると考えられる。

5.ポリオール代謝異常

インスリンを介さずに細胞内にブドウ糖が受動的に流入する細胞においては、ブドウ糖をソルビトール→フルクトースに代謝分解し細胞外に排出するポリオール代謝経路が存在する。 高血糖になれば細胞に流入してくるブドウ糖量が上昇、ブドウ糖をソルビトールに還元するアルドーズ還元酵素の活性が亢進しソルビトールが細胞内に増加する。一方、ソルビトールからフルクトースへ代謝するソルビトール脱水素酵素の活性が上がらないため、ソルビトールが速やかに代謝できず細胞内に蓄積、細胞内浸透圧の上昇により水分が細胞内に流入し細胞は膨潤する。 これが細胞の機能障害を引き起こすと考えられる。

6.蛋白のグリケーション亢進

グリケーション(非酵素的糖化)とは、ブドウ糖などがタンパク質に非酵素的に結合する状態である。食品化学の世界では古くから糖液の中でタンパク質をつけておくと固く、茶色くなる現象として知られていたが、生体内でも同じ様なことがおこっていると知られるようになったのは20年ほど前のことである。赤血球中のヘモグロビンのグリケーションもまた、赤血球の変形能の低下、酸素運搬能力の低下などにより末梢組織の酸素不足による細胞障害も助長されると考えられる。グリケーションが進行すると非可逆的な変化を生じ、終末糖化産物(AGE)を生じる。 このような状態においては蛋白分子が架橋形成などを生じ、組織は硬く変性する。また、AGEは一種の異物であるのでこれを除去するためにマクロファージ遊走、サイトカイン放出を引き起こし細胞傷害を惹起する要因となる
フリーラジカル産生亢進
ブドウ糖の自動酸化、グリケーション、AGE産生のプロセスで多くの活性酸素、フリーラジカルが発生、またマクロファアージがフリーラジカルそのものやサイトカインを放出する事により高血糖状態では酸化ストレスが高まっていると考えられる。これらフリーラジカルは血管内皮細胞などに対し細胞障害性に働く

7.PKCの活性亢進

PKCは血管の透過性、収縮能、細胞外基質の産生、などの血管機能の維持に関与する酵素である。糖尿病状態における過剰なブドウ糖の細胞内流入により内因性のDG(ディアシルグリセロール)が増加することによりPKCが活性化し、その結果血管基質の肥大、透過性亢進などにより血管障害が惹起されるのではないかと考えられている。特に網膜症、腎症の進展に関与している可能性が高く、DG−PKC経路を阻害するビタミンEやPKCb阻害剤をマウスに投与したり遺伝子操作でPKC活性を抑えることにより、網膜血流の改善、腎における糸球体濾過量や微量尿アルブミン分泌などが改善することが動物実験で報告されている。
現在、すでに欧米でPKCb阻害剤のヒトを対象にした臨床試験が始まっており結果が待たれる。

8.血液凝固・レオロジー異常

糖尿病合併症の進展には血小板も重要な役割を演じていると推測される。糖尿病患者では活性化血小板が増加しており、凝固系亢進状態になっている

9.大血管障害の発症メカニズム

大血管障害は糖尿病特有の合併症ではないが、糖尿病は独立したリスクファクターとして重要である。細血管障害と同様に高血糖が動脈硬化を促進している。そのメカニズムとしては細血管障害のメカニズムで解説したと同様のメカニズムに加え、酸化LDL、糖化LDLの増加によるマクロファージによるLDL粒子の貪食、泡沫細胞化、サイトカイン放出による平滑筋細胞の増殖などによる血管の粥状動脈硬化の進行が考えられている。
さらに 大血管障害による閉塞性動脈硬化の最終局面である血栓生成過程で血小板の機能亢進が大きな役割を演じていると考えられる

1.1型糖尿病とは?

このタイプの糖尿病は、昔、若年型糖尿病といわれていた糖尿病で突然発病するのが特徴とされていました。すい臓のインスリンを分泌する細胞が破壊された結果、インスリンが完全に欠乏してしまう病気です。インスリンが完全に欠乏すると生物は食べることで得られたエネルギー(ブドウ糖)を体内の細胞で利用できなくなり、急速に衰弱、死に至ります。インスリンを補うことが唯一の治療法であり、これがインスリン依存型といわれるゆえんです

2. 1型糖尿病の成因

なぜ、インスリンを出す細胞が破壊されるのでしょうか?これには免疫の異常が関係していると考えられています。免疫とは、体内に病原体や異物が侵入してきた時にそれを撃退し体を守るシステムです。このシステムの主役はリンパ球といわれる一連の免疫細胞です。この免疫細胞のうちTリンパ球といわれる細胞は、ちゃんと病原体/異物と自分自身を構成している細胞を見分けて、見知らぬものが侵入してきたら速やかにキラー細胞(攻撃型細胞)に指令を送り、直接、異物を破壊したり、また抗体を介して侵入者を撃退することにより生体を守っています。このように生体には自己認識機構(自己と非自己を識別するメカニズム)が存在します。それを自己免疫寛容といいます。このメカニズムで重要な役割をしているのが主要組織適合抗原(MHC)=HLA(ヒト白血球抗原)という細胞表面に存在する抗原(目印)ですが、このHLA近傍の遺伝子の異常ががこの免疫寛容の破綻に関与しており、これにより自己の免疫細胞の膵B細胞に対する攻撃がはじまり、最後には破壊されてしまうわけです。
これはNODマウスというインスリン依存型糖尿病のモデル動物のすい臓の顕微鏡写真です。インスリンを分泌するランゲルハンス島(膵ラ氏島)のB細胞の周りにリンパ球を中心とする免疫細胞が取り囲み攻撃をしているものです。ヒトのIDDMでも同様のことが起こっていると考えられています。
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一部の患者さんではある種のウイルスの感染がこの免疫異常のきっかけになり突然発症すると考えられます。しかし、多くの患者さんではこの破壊は糖尿病が発症するずっと以前から始まり、ゆっくりと確実に破壊が進んでいき、糖尿病にいたると考えられています。その証拠として糖尿病が発症する以前から膵B細胞やインスリンに対する自己抗体(抗GAD抗体、インスリン抗体など)が認められることが明らかになっています。
この遺伝子は、HLA(ヒト組織適合抗原)遺伝子近傍に存在することがわかっていますが正確にどんな遺伝子であるかはまだ研究中です。また、糖尿病の遺伝子は一つだけではなく数個の遺伝子がかかわっていると推測されています。この10年以内にはこれらの遺伝子も明らかになるでしょう。

1.インスリン分泌低下と抵抗性について

入門編で示したように2型糖尿病が発症すなわち、末梢細胞への糖の取込みが減少し血糖があがる原因にはインスリンの量的不足(膵B細胞からの分泌量の低下)と糖を取込む側の細胞におけるインスリン作用の減弱(インスリン抵抗性)のいずれか、また2者の下図のような関係があります。
インスリン抵抗性がなくてもインスリン分泌が減り量的不足を生じても血糖が上がります(糖尿病状態:左)、一方、インスリン抵抗性が増大するとそれを補うようにインスリン分泌が過剰になります(高インスリン血症)。しかし、インスリン過剰分泌が限界に達し分泌が低下してくると相対的なインスリン不足状態に陥り血糖値が上がり始めます(糖尿病状態:右)
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2.インスリン分泌障害について

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糖尿病の初期にはまず追加分泌が障害され、食後血糖が上昇、その後に基礎分泌量も低下し空腹時血糖が上昇してきます。
インスリン分泌には2種類あります。まず、食事の際に、糖が消化吸収され血管内に流入してくると、膵臓のB細胞からインスリンが速やかに分泌されます。 これにより血液中の糖は速やかに筋肉、脂肪細胞に取り込まれエネルギーとして燃焼し、または貯蔵に回されます。これをインスリンの追加分泌といいます。この追加分泌が障害されると食後の血糖値が上昇します。この追加分泌は糖尿病のごく初期から障害されると考えられ、糖尿病はまず食後高血糖から始まると考えられます。 一方、インスリンは空腹時にもごく少量が持続的に分泌されておりこれを基礎分泌といい、主に肝臓でのグリコーゲン分解→ブドウ糖新生による肝臓からのブドウ糖の放出をコントロール(抑制的に)しています。この基礎分泌が障害されると肝臓からの糖放出が抑えられずに空腹時の(食前)血糖が上昇します。
健常人のインスリン分泌パターン:ブドウ糖を静脈内投与した際のインスリンの追加分泌を詳しく見ると図のように急峻なピークとそれに続くなだらかな山の2相性の分泌パターンを示します。それぞれ第1相と第2相の分泌と呼びます。糖尿病の場合にはまず図の様に第1相の分泌が消失するのが特徴です。
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3.インスリン分泌のメカニズム

ここではまずインスリン分泌がどのように起こるのか、インスリンが標的細胞(肝、筋肉細胞)にてどのように作用するのかを、そしてそれらの異常を惹起する遺伝子異常や環境因子について解説する。
血液中のブドウ糖は、インスリン分泌細胞の細胞表面に発現するGLUT2というトランスポーター(運び屋)によって細胞の中に取込まれる。

1.細胞内に取込まれたブドウ糖はグルコキナーゼなどの解糖系酵素で代謝、分解されミトコンドリアなどでATPエネルギーを産生。
2.産生されたATPエネルギーは、CAMP経路などを経て、インスリン合成を刺激細胞内のプロインスリン(インスリンの前駆体)が産生。
3.一方、ATPによりATP依存性Kチャンネルを閉鎖し細胞膜が脱分極する。 その結果電位依存性カルシウムチャンネルが活性化し細胞内へカルシウムが流入する。
4.細胞内カルシウム増加により合成されたプロインスリン粒子がを細胞外に放出される。 その際、プロインスリンはインスリンとCペプチドに分離され血中に分泌される。
インスリン分泌障害のメカニズム
糖尿病の場合は、上記のブドウ糖が細胞内で代謝される過程、ATP産生の過程、K依存性チャンネルの異常など、各ステップでの障害が考えられている。

4.インスリン分泌に関連する遺伝子異常

1.グルコキナーゼ遺伝子の異常
2.HNF4α遺伝子異常
I3.PF-1遺伝子異常
4.HNF1β遺伝子異常
5.ミトコンドリア遺伝子の異常
6.インスリン遺伝子の異常
7.アミリン
しかし現在まで明らかになっている遺伝子異常による糖尿病はの5%弱にすぎない)

5.インスリン分泌障害を引き起こす環境因子 糖毒性(glucose toxicity)

高血糖がインスリン分泌障害を引きおこすとする仮説

高血糖
膵B細胞におけるグルコース感受性の増加
インスリンの過剰分泌
B細胞におけるインスリン含有量の低下
グルコースポテンシエーションの障害 インスリン分泌の低下

グルコースポンテシエーション:グルコース存在下で、アルギニンなどグルコース以外のインスリン分泌刺激物質のインスリン分泌刺激が増強する効果
臨床的には空腹時血糖が140 mg/dl程度に上昇すればすでに糖毒性が存在し、インスリン分泌が障害されはじめさらなる高血糖につながる悪循環が始まると考えられている。

6.インスリン分泌障害を引き起こす環境因子 脂肪毒性(lipotoxicity)

長期間にわたる多量の脂肪酸の存在下では、膵B細胞はグルコースによるインスリン分泌が障害されることも知られている。
ラットの実験でも高脂肪食にて飼育した場合、血中脂肪酸の上昇に伴い、ラ氏島内の中性脂肪含有量が上昇し、インスリン基礎分泌量は上昇した(これはグルコースに対する感受性の亢進を意味する)一方でグルコースに対するインスリン分泌は障害されることが観察されている。

7.インスリン作用のメカニズム

1.インスリンが肝臓や筋肉の細胞に作用するにはまず細胞表面のインスリンレセプターに結合する。
2.インスリンがレセプターに結合するとレセプターの下に結合した蛋白(IRS-1など)が次々と活性化しその信号を伝えて行く。
3.この信号でトランスポーター(GLUT4)が活性化しブドウ糖を細胞外から細胞内へと移送する。
また、取り込んだブドウ糖からグリコーゲンを合成し貯蔵したりエネルギーとして燃焼させる。

8.インスリン作用の障害(インスリン抵抗性)のメカニズム

現在、インスリン作用に関する遺伝子異常は、
インスリン受容体(レセプター)遺伝子
そのほかに、GLUT4に関連する遺伝子などもその候補の一つと考えられている。

インスリン抵抗性のメカニズムには以下の因子が考えられている
1.脂肪酸 (FFA)がGLUT4の発現を抑制
2.高血糖が細胞内グルコサミン濃度を上昇されることにおりGLUT4の発現を抑制する
3.脂肪細胞から放出されたTNFαがインスリンレセプター下のチロシンキナーゼ活性を抑制、またGLUT4の活性にも抑制効果を示す

9.糖尿病の自然歴


糖尿病の臨床的発症に先立つインスリン抵抗性の存在
(インスリン抵抗性と分泌不全、卵とニワトリの関係?)
糖尿病と診断された方の過去の検診のデータをさかのぼって検討したところ、空腹時血糖が上昇する10年も前から空腹時インスリン値が上昇し、インスリンの抵抗性が糖尿病の発症に先行しているのが認められる。
このような例は肥満をともなった糖尿病患者に多く見られる。欧米ではこのタイプの経過をたどる肥満糖尿病が多いが、日本人においては、インスリン分泌不全が優位の比較的やせ型の2型糖尿病が多かったが最近は肥満糖尿病も増加している。
また、これらインスリン抵抗性が引き起こされる病因として内臓脂肪の存在が最近注目を集めている。 この脂肪細胞から分泌される様々な因子を総称してアデポサイトカインとよび、インスリン抵抗性や直接動脈硬化の促進に関与すると考えられている。

糖尿病とは?

糖尿病は、膵臓から分泌されるインスリンの量的不足または作用不足により、血液中のブドウ糖の利用が低下し、その結果、血糖値が上がる病態をいいます。この高血糖を長期間放置しておくと身体の色々な場所に合併症といわれる障害が出現します。

インスリンとは?

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インスリンは膵臓のランゲルハンス氏島にあるB細胞から分泌されるホルモンです図のように膵臓を顕微鏡で拡大すると紫色の消化液を作る外分泌腺の中に小島のように浮かぶピンク色に染まる内分泌細胞の固まりがあります。これをランゲルハンス島(ラ氏島)と呼びます。このラ氏島内にB細胞と呼ばれる細胞からインスリンは分泌されます。

インスリンの働き

インスリンは生物が生命活動を維持するのに不可欠な大切なホルモンで、これが欠乏すると生きていけません。また、インスリンは見方を変えると、大切なエネルギー源のブドウ糖の流れを肝臓から血液中へ、血液中から細胞へと調節しているホルモンです。
以下に示すような働きを介して血糖を調節しています
1.筋肉、脂肪、肝細胞へのブドウ糖の取り込み促進
2.細胞内でのブドウ糖からグリコーゲンの合成を促進
3.肝臓での糖新生および糖放出の抑制
4.肝臓での蛋白合成の促進
血糖値の調節 インスリンによる血糖値の調節
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血糖値は、以下の様に食事からの流入分と肝臓からの放出分のINPUTと筋肉での燃焼、脳での消費、肝、脂肪組織での貯蓄にまわるOUTPUTとのバランスで100mg/dl前後に調節されています。
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インスリン分泌量が減少したりインスリンの作用が減弱したりすると右図のように血液中の血糖が上昇してきます。

インスリンの働き2

インスリンの働きをもう少しミクロの目で見てみましょう。
健康な状態

ins-n-b-159.gif ブドウ糖は血液の流れにのって細胞の手前まで運ばれてきますが、細胞の中へは自由に入り込めません。そこにはドアがあり通常鍵がかかっておりしまっています。しかし、膵臓から分泌されるインスリンというホルモンが細胞の鍵穴(インスリンレセプターと呼ばれています)に差し込まれると、そのドアが開き上の図のように血液中から細胞内にブドウ糖が流れ込みエネルギーとして燃やされたり、蓄積されたります。必要に応じてブドウ糖は細胞内に流れ込みますので血液中のブドウ糖は常にある範囲に収まっています。



糖尿病状態

ins-dm-159.gif インスリンレセプターに結合するインスリンが不足したり、レセプターのインスリンに対する感度が低下すると、細胞のドア(ブドウ糖の取り入れ口)が十分に開かなくなります。その結果、細胞内にブドウ糖が十分流れ込まなくなり細胞内はエネルギー不足に陥る一方、血液中にブドウ糖があふれてしまいます。これが高血糖です。

インスリンの動き

血糖値とインスリン分泌の1日パターン(健常人における1日の変化)
図のようにインスリンは食事量にあわせて分泌され、常に血糖値が一定になるように調節しています。食事にあわせてインスリンが速やかに分泌され、その結果、血中に吸収されたブドウ糖は、筋肉、脂肪組織に取り込まれ、一方、その間、肝臓からの糖の放出は抑制されます。
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糖尿病の分類

一言で糖尿病といってもその原因はさまざまですが2つに大別できます。

病型 1型糖尿病 2型糖尿病
頻度 5% 95%
年齢 若い人に多い 成人に多い (最近、子供も増えている)
発症 突然のことが多い ゆっくり
体型 やせ型 肥満型
治療 初めからインスリン注射 まず食事、運動療法から
原因 ウイルスの感染、自己免疫により膵臓のインスリン分泌細胞が破壊され完全にインスリン欠如する 種々の原因によるインスリンの作用や、 インスリン分泌の低下

日本における成人糖尿病の大半は緩やかなインスリン不足や作用不足が原因の2型糖尿病です。

糖尿病の過去・現在・未来 糖尿病の歴史

 

パピルスエベルスを表した切手
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糖尿病の歴史は古く、最古の記録はBC1500年頃の古代エジプトのパピルス エベルスに糖尿病の記載と思われる文章が認められます。また、紀元1世紀のころローマの医師でアレタエウスが、糖尿病の症状について詳細に記録しています。

 

1994年11月神戸で開催された国際糖尿病学会の記念切手図柄は藤原道長とインスリンの結晶を表しています。
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一方、東洋でも紀元ごろの中国で消渇という名前で医学書に糖尿病の記載が認められ、すでに美食との関連が述べられていました。
日本においては平安時代、摂政関白としてわが世を満月にたとえ欠けたるものは無しと権力と富を手にした関白藤原道長。この人物の伝記である御堂関白日記にその生活ぶり、病気のことが細かく書かれていますが、その記述から糖尿病であったと考えられます。日本史に登場した最初の糖尿病患者さんといっていいでしょう。

 

バンチング博士とベスト博士と糖尿病犬
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長い間、糖尿病の原因は解明されず治療法のない不治の病とされていました。 糖尿病の研究そして治療における夜明けはインスリンの発見でした。インスリンは 1921年にバンチング(写真右)とベスト(写真左)により発見されました。写真中央の犬は膵臓を摘出された糖尿病犬です。この犬に膵臓から抽出した精製物を注射したところ血糖値が下がり糖尿病が良くなりました。この物質をインスリンと命名したのです。この発見によりバンチング博士はノーベル医学賞を受賞しました。この発見からわずか半年後にはインスリン依存型糖尿病の瀕死状態の少年に注射され、病状の劇的な改善を見ました。これにより糖尿病治療の新しい時代が始まりました。

 

エリオットPジョスリン博士
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糖尿病臨床学の父とも仰がれるジョスリン先生
インスリンの発見までは糖尿病の治療は極端なエネルギー制限食、脂肪食などが試みられていた。現在からみるととんでもない治療でした。ジョスリン先生は数多くの糖尿病患者の治療にあたりながら、常に患者を中心におき現在の糖尿病臨床の基礎をつくった名医です。

糖尿病の現在未来 全世界で増え続ける糖尿病

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現在日本だけでなく世界中で糖尿病が激増しています とくにアジアでその傾向が顕著です。もともとアジア系民族は膵臓のインスリン分泌力が弱いところに食生活の西洋化、運動不足が原因ではないかと思われます。 
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潜在患者数を含めると糖尿病を持つ方は2007年には890万人を越えましたが、患者数の増加はとどまることを知らず2010年にはなんと糖尿病は1080万人予備軍もふくめると2360万人以上になります。40歳以上の3人に1人が糖尿病の危険にさらされているということです。まさに国民病です。しかも、その内治療を受けておられる方は半数にも達しません。まず日々の生活を振り返り、ちゃんと健診を受けること、異常値がでればまずかかりつけ医に相談しましょう

糖尿病の現在未来 糖尿病はなぜ増え続けるのか

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(ライフスタイルの変化と糖尿病有病率の増加)
日本における糖尿病の有病率は厚生省の統計によりますと食事摂取エネルギーの増加、自動車登録台数の増加に伴い、年々増加の一途をたどっています。言い換えると生活が豊かになるにつれ増加しているわけです。とくに食事の総カロリー量は1975年を境に頭打ちとなり減少に転じていますが脂肪の摂取量は増加し続けています。ちなみに1970年はマクドナルドが日本に進出した年でもあります。ハンバーガーなどの外食、スナック菓子の摂取量は現在でも減っていないのがその理由でしょう。

インスリン注射薬

最近は、注射が楽なペン型のインスリンが主流です。
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以前はブタやウシの膵臓から抽出したインスリンを使用していましたが、現在では遺伝子工学的に生産された合成ヒトインスリンが使われています。インスリンの種類は、その作用時間により分けられます。注射後速やかに効果の発現する速効型とゆっくりと半日ほど効果の持続する中間型、その両者をあらかじめ混合した2相型が代表的なものでしたが、最近はインスリンのアミノ酸配列にすこし手を加えた新しいインスリンのカテゴリーである アナログインスリンが主流になりつつあります。
(1)超速効型インスリン
ヒトインスリンのアミノ酸配列を少し入れ替えることにより今まで以上に注射してからの効果が早く出現するインスリンです。注射後5分くらいから聞き始めますので食事直前に注射をします。食事に対するインスリンの追加分泌を補うのに適しています.
商品名 ノボラピッド注、ヒューマログ、アピドラ
(2)持続溶解型インスリン
これもヒトインスリンのアミノ酸配列をすこし変更したインスリンです今までのゆっくり効く中間型インスリン以上に不用なピークがなく24時間効果が持続します インスリンの基礎分泌をおぎなうのに有用なインスリンです
商品名 ランタス レベミル トレシーバ
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注射部位と注射の際の注意点

注射の仕方:普通、下の図のようにおへその周りのおなかの皮下, 大腿前面の皮下に自分でうちます。注射のハリはとても細く刺す痛みもほとんどありません。同じ部位に注射を続けると皮膚が硬くなりますので、毎日注射部位をずらしてください。大腿に注射したあと運動をすると血流が促進されインスリンの吸収が早くなり、インスリン効果が早く出現し血糖コントロールが乱れることがありますので注意しましょう。また同様の理由でインスリン注射後、すぐにはお風呂には入らないほうがいいでしょう。
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インスリンの種類と注射回数

中間型(N)インスリン 朝食前1回
昔はこの打ち方からインスリン治療を始めましたが最近はあまりもちいられません
中間型(N)インスリン 朝夕食前2回
インスリン分泌能力の比較的保たれている2型糖尿病患者の方に多い打ち方です
混合型(30R、25MIX または30MIX、50MIX)インスリン 朝夕食前2回
中間型2回注射では食後の血糖値が高い場合に速効型(R)または超速効型(MIX)が25〜50%含まれた混合型をつかって食後血糖を下げるようにします 昼食後の血糖をさげるためには50MIXの各食前3回注射というのもあります
BOT療法 (持効型インスリンと経口薬を併用)
最近はインスリン治療の入り口として24時間効果の続く持効型と言われるインスリンを夜または朝に1回注射し、飲み薬と併用するBOT(経口薬と基礎インスリンとの併用)療法という方法がよく行われるようになりました。
これまではインスリンを開始するにはどうしても入院が必要でしたが、この方法では外来で開始できるという点、1日1回家で注射すればよいという点などのメリットがあります。もちろんBOT療法でも血糖改善が不十分な場合は、次のステップに進む必要があります
強化インスリン療法 各食前速効型+眠前中間型
自然のインスリン分泌をパターンいちばん近い注射方法です。インスリン分泌が廃絶したIDDM患者の方はこの注射方法が必要です。
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インスリン以外の注射薬 GLP-1作動薬

食事をし、栄養素(主に糖質)が消化吸収され血液中にはいってくるとすい臓からインスリンが分泌されます。これは血管にはいってきたブドウ糖がすい臓のインスリン分泌細胞に取り込まれインスリン分泌を刺激されるわけですが、じつは栄養素が小腸までやってくると小腸の壁にあるK細胞、L細胞からインクレチンというホルモンが分泌され、これがインスリン分泌を増強するということが知られています。 ただこのインクレチン(GLP-1、GIPと呼ばれます)は血液中のDPP-4阻害薬により数分で分解されてしまいます。 糖尿病ではこのインクレチンのGLP-1の分泌が低下していることが血糖があがる1つの要因です。 このGLP-1作動薬は、これを壊れないようにしてGLP-1の効果が持続するように開発された注射薬です。
現在2種類の薬剤があり、1つはGLP-1と構造が似たアメリカドクトカゲの唾液から発見されたものでGLP-1と似た構造のホルモンと、 ヒトのGLP-1を血液中で壊れにくくなるようにアミノ酸の構造に細工を加えたものがあります。これらを1日2回、または1回注射すると、食事のときのみインスリン分泌が増強され、また肝臓から糖を放出するグルカゴンの作用を抑えて血糖値を改善することができます。低血糖を起こしにくいのが特徴で、また体重減少効果や食欲抑制効果も期待できます。
主な薬品の商品名 バイエッタ、ビクトーザ、リキスミア

インスリン治療の適応

糖尿病性昏睡
重度の肝障害、腎障害
重症の感染症の併発
外科手術
糖尿病合併妊娠
インスリンの絶対適応
著明な高血糖
FBS250mg/dl以上
随時血糖350mg/dl以上
尿ケトン体強陽性
SU剤無効例
インスリンの相対適応
抗GAD抗体陽性
グルカゴンテストでCRP増加
反応2.0ng/ml以下
尿中CPR排泄量
25μg/day以下
インスリンの相対適応

以前はインスリン治療はインスリン分泌が低下した場合の補充療法であると考えられていましたが、最近、インスリン分泌能力の残っているインスリン非依存型糖尿病の食後高血糖を是正する目的で速効型(R)インスリンを各3食前に注射する方法が用いられるようになってきました。

外来でインスリンを始めるにあたって

インスリン注射についてはいまだにいろいろと誤解があり、治療の開始にあたり不安や戸惑いがあるかもしれません。インスリン療法は、ひとことでいうと体内で不足しているインスリンの補充療法です。 インスリン注射を開始するというのは、必ずしもあなたが重症の糖尿病であると言うことではなく、また、ずっと打ち続けなければいけないというものでもありません。


★インスリン注射の効果:
1.高血糖が改善し糖毒性が解除される。 これによりインスリンの分泌能力の回復や筋肉・肝臓でのインスリン抵抗性が改善する
2.膵臓が休息できるのでインスリン分泌が回復する可能性がある
3.全身倦怠感などの症状が改善する
4.良好なコントロールにより糖尿病合併症の進行を阻止できる


インスリン導入のステップ
まず最初に次のことを勉強します
1.インスリン注射用のペンの使い方
2.実際の注射の仕方
3.血糖自己測定のやり方
外来でのインスリン注射は次の3つのステップに分けれます。
ステップ1 (1〜2週間) 少量のインスリンでまず注射に慣れるのが目的
ステップ2 (2〜4週間) ゆっくりインスリンを増量し高血糖の改善を目指す
ステップ3 (4週間〜 ) 注射量と回数を積極的に調節しより良い血糖コントロールを目指す


インスリン注射手技のチェックシート
1)白濁したインスリンは10回以上振ったか?
2)インスリンのゴム部を消毒したか
3)注射針はしっかりねじ込んだか
4)2単位空打ちをしたか
5)ペンのダイアルは正確にセットできたか?
6)注射部位はローテーションしているか?
7)インスリン注射部を消毒したか?
8)注射部をつまんで注入できたか?
9)注入後ひと呼吸おいてボタンを押ながら抜いたか?
10)ダイアルは0まで戻っているか?
11)注入部は揉まずに軽くおさえたか?


シックディ ルール
糖尿病患者さんの場合は、日頃の風邪、下痢、腹痛などちょっとした病気も油断禁物です。特にインスリン治療や飲み薬を飲んでおられる場合は急激にコントロールが悪化したり、場合によっては昏睡に陥ったりすることがあります。なぜ、ちょっとした病気で血糖コントロールが乱れるのでしょうか?それには次のような理由があります。
1)病気のときにはストレスホルモン(副腎ホルモンやアドレナリン)がたくさんでます。これらのストレスホルモンはインスリンの働きを抑え血糖をあげる作用があります
2)下痢や発熱があると脱水になり易く血液が濃縮されます。血液が濃縮されるとその結果、血糖値もあがります。
以上のように、食べれなくても血糖が上がる場合がり、インスリンの必要量もいつもより増加していることも多いのです。食べれないのだけの理由でインスリン注射を自己中断してしまうのはかえって危険です。以下の様な状況のときは主治医に連絡をしアドバイスをもらいましょう。
1.まったく食事がとれない
2.下痢や嘔吐がつづく
3.高熱がつづく
4.尿検査用紙を持っている場合 尿ケトンが強陽性となる
5.尿検査用紙を持っている場合 尿糖が強陽性となる
6.血糖自己測定をしている場合   BS300mg/dl以上がつづく


病気の時のインスリン注射量の目安

食事摂取量

注射量

全量

いつもの量

半分

1/2量

食事不能

1/3量
病気の際は食後に食事量を確認してから注射しましょう。

病気の時の食事について
1)糖質を主体として消化吸収のよいものを
2)水分や電解質をしっかり補給 (脱水予防)
3)味噌汁、スープ、果汁などを取る
とにかくしっかり水分をとりましょう

肥満は成人病共通の危険因子

肥満のない人の各病気の危険率を1とした場合の肥満者の危険率は下のようになり糖尿病などは肥満をしている人はしていない人の5倍もなりやすいのです。 image50.gif

肥満している方に多い成人病

高血圧

糖尿病

高脂血症

痛風


脳血管障害

夜間無呼吸症候群

動脈硬化症

心臓病


脂肪肝

胆石

月経異常

膝関節症

肥満と死亡率
その結果、肥満すればするほど相対的な死亡率は上昇し、50%以上の肥満の人は死亡率は肥満していない人の2倍近くにも達します。
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厳格血糖コントロールへの疑問 ACCORD試験

ACCORD 試験は2 型糖尿病で心血管病のハイリスクの患者10251名を対象とし、 HbAlc < 6%(日本の基準なら5.6%)を目指す強化療法群と7.0% 〜7.9% (6.6〜7.5%)を目指す従来療法群に分け,非致死性心筋梗塞・脳卒中・心血管死の発症率を比較した大規模試験です。 .試験開始時のHbAlcの中央値は8.1(7.7)%であったが, 1 年後には強化療法群でHbAlc6.4(6.1)%,従来療法群で7.4(7)%となりました。平均観察期間は5 年の予定であったが,死亡率が1000人・年あたり従来療法群11に対して強化療法群14 と有意に増加していることが判明し, 3 年半の時点で中止となりました。 その結果は 厳格な血糖コントロールでは 大血管障害は抑制できず 重症低血糖が増加 体重増加 逆に総死亡率が増加するというものでした 但し,対象とした糖尿病は,罹病歴が長い、すでに合併症を有する症例やハイリスク症例であったことから、すでに合併症がでている罹病期間の長い糖尿病をHbA1cを指標として性急にさげるということは危険であるということでしょう どこまでHbA1cをさげるかということ以上にそのように血糖を改善させるかということが重要と思われます。

運動療法を失敗しないコツ

運動で失敗しないコツ

あるインターネット調査によると「ダイエットをしたことがあり、かつ失敗したことがある」と答えた人は220人となり、女性181(82)、男性39(18)でした。

そのうち、失敗したことがある件数が多い順に集計をすると次の結果となりました。

1位「ジョギング・ランニング」 35

2位「腹筋など筋肉トレーニング」 20

3位「エクササイズ」18

4位 「スポーツクラブ」 12

5位「エステ」7

6位「耳ツボ・鍼」3

2位の筋肉トレーニングについては、具体的に、「腹筋」、「縄跳び」などで、3位のエクササイズでは、「風呂でのストレッチ」、「寝る前のストレッチ」、「ホット・ヨガ」、「市販のDVD系エクササイズ」などがあがりました。これら運動法で共通する失敗の理由についていちばん多いのは、「継続しなかった」ということです。1位~5位を合計すると71(73)にもなりました。つまりは、どの方法をとっても、「続かないことによる失」が圧倒的多数を占めているというわけです。

では、なぜ、継続できなかったのでしょうか。

「仕事が忙しくなると、1分でも早く寝たくてさぼってしまった、「残業が続くと時間がとれなくて続かなかった」と、多忙による理由が45票と半数を占めています。 また、忙しい時期を過ぎたとしても、「結局面倒くさくなってやめてしまった」、「いったん中断するとモチベーションが下がって続かなくなる」という意見が多かったようです

次に多いのが、「ランニングを始めて1週間で足腰が痛くて走れなくなった」、「一気に走りすぎたせいで、筋肉痛が激しすぎて動けなくなってしまった」、「ランニングをして、長時間おふろで汗をかき、食事のコントロール。10日で5kgと一度に落とし過ぎて、激しくリバウンドして5日でもとに戻った」、「ジョギングでまさに三日坊主。つらくてすぐにやめてしまった」など、3日~10日で「あっちこっちが痛い、つらい、しんどい」となってしまうパターンでした。なかには、「走りすぎで足の骨を折ってしまった」方もおられました。

これらハードワークについても、「1週間ほどで体が疲れ、一度辞めてしまうとやる気がなくなってしまう」という意見が多く、つまりは、「志しなかばで中断した場合、その後同じトレーニングへの復帰はできなくなる」という現象が起こっているのです。

■運動をして、キモチいいかどうか

3日で3kgを落としたいなどの効果を急ぐと、どうしてもハードな運動をこなしたくなります。その結果、激しい筋肉痛などを起こしてギブアップするパターンが後を絶ちません。一度ギブアップしてしまうと、どんなことにせよ、再びの挑戦はトラウマもあってかなり難しくなります。そうならないためには、まずは無理をせずに少しずつ始めて、『運動に慣れる』ということが大事です。どういう状態かというと、『運動を始めたときに徐々に体が軽くなってきて、運動後は爽快な気分が味わえる』ということです。

爽快さを体感すると、必ずまた運動したくなります。

 運動の強度を上げるには、爽快さを感じた後で少しずつ実行します。具体的には、運動時間を延長するとか、ジョギングならスピードをアップするなどしていくといいのですが、1回で上げる強度は、5%10%アップにとどめておきます。例えば、前日に30分走ったのなら今日は33分ぐらいとする、1時間で5kmをウォーキングしたのなら、今日は5.5kmを歩く、というふうに。

 それ以上をアップすると、筋肉や心肺機能に負担をかけて、体全体に疲労がたまります。強度を上げすぎると3日でギブアップというのは、実は自然なことなんです。体がとめているわけです」運動中、運動後にキモチよさを感じるかどうかが大切なことです。

■運動後に食べ過ぎてしまうときはどうする?

食べすぎ

次いで目立った回答に「ランニング後はご飯がおいしい。ばくばく食べていたら余計に太った」というパターンがあります。

「爽快さが高じて食べ過ぎてしまうというのは、生活習慣病などの療養においてもよくあることです。それを避けるためには、食後に運動してください。ウォーキングやお部屋の片付けなどは食直後からでもOKですが、運動強度の高い運動、例えばジョギングなどは、食後すぐの運動は消化不良を起こすことがあるので、避けましょう  仕事などでそううまく食後に時間がとれないときは、運動前におにぎり1個、バナナ1本、栄養食のバーなどを食べておきます。運動後は、事前に食べたカロリー分を減らしてください。 できれば、ごはんや麺類などの炭水化物を減らして食べるようにします。最初はおなかが物足りなくても、3日ほどですぐに体全体が軽くなってダイエットの効果が表れるでしょう。これも、慣れると爽快感を覚えるようになります。 空腹を我慢して運動し、後に『ドカ食い』とか『ビールを一気飲み』をすると血糖値(血液中の糖分)が急上昇して脂肪が蓄積する原因になります。健康面でもよくありません」

食後ウォーキング

最初から体が悲鳴を上げるようなハードな運動をしないこと、体がキモチいいと思う量を行うこと、運動後の食べ過ぎ予防のために運動と食事のタイミングを計ること。この3つを守り、これまでの失敗を成功へのきっかけしていただいたらと思います。

ちりも積もれば、、ニートで痩せる?

今までは運動とはあまり見なさなかった低強度の家事などの日常生活活動 NEAT(non-exercise activity thermogenesis)の重要性も注目されている。 安静時より多くのエネルギーを消費する全ての動きを「身体活動」と表現し、これを体力の維持・向上を目的として計画的・意図的に実施する「運動」と「運動」以外の職業活動上のものも含む日常の動きである「生活活動」とに分類する。 標準的な身体活動レベルの人の総エネルギー消費量(24時間相当)は、大きく基礎代謝量(約60%)、食事誘発性熱産生(約10%)、身体活動量(約30%)の3つで構成されるが、そのうち、基礎代謝量は体格、食事誘発性熱産生は食事摂取量に依存するためほぼ一定であり、身体活動量の多寡により総エネルギー消費量が決まる。肥満者は非肥満者に比べ歩行なども含めた立位による活動時間が1日150分以上少ないという報告もある。適度な食事制限下という条件でテレビなど座ってみるのではなく立ってみる,家事を積極的に行うなどで肥満,糖尿病予防も可能である。METSでいうと2~3METSを積み重ねることが大切である。

糖尿病やメタボリックシンドロームを予防するためには、運動により脂肪細胞を減少させ、肥満を防ぐことが欠かせません。しかし、忙しい毎日の中で、ジョギングや水泳をする時間はなかなかとれないのが実情でしょう。  そこで私が提案したいのは、テレビを見る時に立っていることです。ここにおもしろいデータがあります。アメリカの看護師さんを対象に調査した結果では、一日に2時間テレビを長く見るごとに、肥満の発生率は23%、糖尿病の発生率は14%も高くなることがわかったのです。テレビを見る時は、座ったまま体をあまり動かしていないことが原因です。逆に考えれば、立ったままテレビを見ることで、日常の中で運動ができることになります。  人の体がエネルギーを消費するのには、3つのパターンがあります。一つは血液の循環など体の基礎的な機能を維持するため。一つは食べ物の消化や吸収のため。もう一つが身体活動、つまり運動によるエネルギーの消費です。 身体活動には積極的な運動以外に、”NEAT(non-exercise activity thermogenesis)”と呼ばれる運動とは呼べない活動が含まれます。たとえば3時間立っていると、座っている場合に比べて約350kcalも多くエネルギーが消費されるのです。痩せている人は、太っている人より立っている時間が1日平均3時間も長いというデータもあります。また立っていると、じっとしていられずに体を動かすようになります。そうすれば、基礎代謝もあがり、痩せやすい体になっていくのです。  立ってテレビを見るのは、一つの例にすぎません。特別に時間をとらなくても、日常の中で活発に動くことにより、肥満や糖尿病を防ぐことができます。だから、私は、”NEATな生活をしてください”と患者さんにお願いしています。近頃話題の、仕事をしない”ニート”とは正反対の健康習慣です(笑)。

ウォーキングの効果

運動療法はだれでもいつでもどこでも安全にできるウォーキングからスタートするのが良い。糖尿病の治療や予防に対するウォーキングの効果については異論のないところである。実際、どの程度の運動が血糖、脂質や血圧などに対し改善効果があるかを調査したスタディ(1)では、最低10Mets/h/wの運動量が必要で、できれば20Mets/h/w以上、最終的には27Mets/h/wの(3.8Mets/日=1時間強の歩行か45分の速歩)  継続した運動が望ましく、 この運動継続することにより、体重は2.4kg BMIで0.9  腹囲は4.8cm減少し、血糖コントロールもFPG 17mg/dl、HbA1c1%の改善が認められている。 またウォーキングの糖尿病の新規発症に対しても予防効果が認められ「 1 日 1 時間の速歩で 2 型糖尿病発症リスクはほぼ半減する」と報告されている(2)  前述の健康づくりのための運動指針では週23METSの運動を推奨しているが、これはちょうど1日1万歩のウォーキングで達成できる運動量でありこれを目標とする。 現在、運動していない人はまず1日2 km/30分/2,500歩のウォーキングからスタートし徐々に増やして1万歩を目指していくのがよい。患者指導の際は達成可能な目標を具体的に示すと良い。たとえばメタボリックシンドロームの症例であれば「腹囲を1ヶ月に1cm減」を目標にするとよい。 腹囲1cm減は内臓脂肪1kgの減量に相当し、脂肪1kgのエネルギーは、約7000kcalであるので1日約230kcalを減らせばよい計算となる。食事のみで230kcalを減らすと基礎代謝量の低下にもつながるので、運動量アップで120kcalを消費しダイエットで120kcalを減らすことで対応するのがよい。例えば、毎日夕食のごはんを半分に減らし、30分の速歩を行うと合計230kcalである。普通速度のウォーキングであれば約45分~1時間となる。これを3ヶ月続けると、3㎝の腹囲減=3kgの内臓脂肪減になる。

 

ウォーキングの目標

毎日の生活にウォーキングを習慣付けるのがた筆者の経験からも困難な場合も少なからず存在する。患者は「ウォーキング=公園で速歩」といったイメージをもつ方も多く、歩く時間が取れないと、わざわざウォーキングの時間を作るというのではなく、表 に示すように日常生活のなかでの歩行を増やしていくということから始めるのがよい。 また自分の趣味や好みにあわせて楽しみながらその過程で歩数が増えているというような工夫も大切である。 1日1万歩を目標とするがあ、まずは現状の歩数に2000歩(15分間)を上乗せし徐々に増やすようにする。可能なかぎり歩数計を持ってもらう。歩数計を使用している人はしていない人に比べ歩数が1日2500歩ほど多くという報告もある。最近はさらに正確に運動量を計測できる3D加速度計を内蔵した機器も市販されておりより生活にエネルギー消費を測定できるのでこれを利用するのもよい。 ウォーキング習慣に役立つこつ

  • 寺社仏閣をめぐる
  • 街道を歩く
  • 商店街、地下街を歩く
  • 美術館・博物館めぐり
  • 写真や写生を楽しむ
  • やせたら着る服を買って飾っておく
  • ガソリン代、電車賃分を貯金する
  • 記録をつけてグラフ化する
  • マップを作り記録する
  • 家を出るときは目的方向の反対方向へ
  • いつもの改札とは反対の改札へ
  • コンビニ、スーパーは1つ遠いところへ