糖尿病合併症について

1.糖尿病は成人病のスーパーマーケット

高血糖(おおまかにいってHbA1cで7%以上、空腹時血糖で140mg/dl以上)を放置していると必ずといっていいほど色々な障害が出現します。また、HbA1c8%以上、空腹時血糖170mg/dl以上の不良なコントロール状態ではそれら障害は重症化すると考えられます。 これらの障害を慢性の糖尿病合併症と呼びます。いずれも障害が完成するまであまり自覚症状はありません。ですから、定期的に各検査を受け合併症の有無を調べることが大切です。 糖尿病治療の目標は以下に述べる合併症の予防にあるのです。しかし、これらの合併症は慢性に進行し早いもので数年から20年たって完成します。

conplications2.gif 糖尿病の合併症は細小血管障害の糖尿病に特有な3大合併症と大血管障害の動脈硬化症(糖尿病は重要な危険因子の1つ)の4つが知られています。



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2.網膜症

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上は正常の眼底写真です。
網膜とは、下の図のように眼をカメラに例えるとフィルムの部分にあたります。正常な網膜は左のような形をしています。全体は一様にオレンジ色で中心にやや暗い色のエリアがあります。これを黄斑といい、視力の70%はこの部分で感じているといわれる大切なエリアです。 写真右の白く光る円状の部分は視神経乳頭といい網膜全体に広がっている視神経が一本の束になって脳につながっている部分です。またそこから赤い動静脈が上と下に走っています。
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sdr-2-92.gif 単純性網膜症
高血糖が続くと網膜に網の目のように走っている毛細血管が脆くなり、点状の小さな出血や蛋白などが漏れ白いシミが出現します。単純性網膜症といいます。この時点では視力低下なども認められません。




image42-92.gif 増殖性網膜症
さらに血管の障害が進行すると網膜の酸欠状態により新生血管が出来てきます。この新生血管は非常に脆く大出血を起こす原因となります。これを増殖性網膜症といいます。この時点でも視力低下などの自覚症状は認められず、大出血や網膜剥離が起きて初めて視力低下を感じますが時すでに遅しで、こうなってしまうと手術をしても必ずしも視力の回復は望めません。現在、事故を含めて後天的に視力を失い盲目になられる患者さんの1/3は糖尿病による失明で、年間3000人に達しています。


3.腎症

腎臓は血液中に溜まる各種老廃物や有毒物質をろ過し尿に捨てる大切な臓器です。この臓器が高血糖にさらされると細胞が徐々に傷害され尿に蛋白がでるようになります。その程度がだんだんひどくなると高血圧が出現、廃物や有毒物質をろ過する力が失われれ尿毒症になります。こうなると人工透析にて血液をきれいにしてやらなければならなくなります。現在、毎年約12000人の糖尿病患者さんが新たに透析療法を開始されており、全透析導入者の37%以上を占めています。

4.神経障害

手足のしびれから始まる障害です。最後に痛みなどがわからない状態になると、下に示す足の病変などが加速度的にどんどん進行します。

5.足の病変(神経障害、大血管障害、感染、壊疽)


高血糖の持続により、動脈硬化が進行すると足の血管が詰まり足の先が壊死を起こします。その際に足先の些細なキズからバイ菌が進入するとあっというまに写真の様な状態になります。このような状態になる人は神経も障害されており足がしびれて全く痛みを感じないことが多く病態を悪化させる一因になっています。(この方はすねのところで足を切断しました。) foot-3.gif


6.脳梗塞

高血糖により動脈硬化症が進むと脳の栄養動脈が詰まり血流が途絶えます。その結果、脳細胞が死に麻痺が起こります。多くの場合、半身マヒです。また、失語症を伴う場合もあります。脳梗塞を起こしたあとは痴呆が進みやすいといえます。

7.狭心症・心筋梗塞

 

心臓の栄養血管に動脈硬化症が進むと血液の流れが途絶えます。その結果、心臓の筋肉細胞が死んでしまいます。 血管がつまった時は左胸部から左腕にかけて激痛がはしります。お年寄りの場合は痛みがはっきりしない場合もあるので要注意です。まさに致命的な合併症です。

右上:血管内腔が動脈硬化をおこした血管で内腔が平滑筋やコレステロールの塊で狭くなった状態になっています。

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脳梗塞・心筋梗塞は糖尿病だけではなく高脂血症、高血圧(その上流には内臓脂肪肥満が存在)、喫煙などの危険因子の集積でそのリスクは跳ね上がります。

8.糖尿病の急性合併症

糖尿病性昏睡(高血糖性)
異常な高血糖が出現すると脱水状態になり、これが血糖を押上げるといった悪循環が出現、昏睡状態になることがあります。この昏睡には2つのタイプがあります。
ケトアシドーシス性昏睡(DKAC)
インスリンの完全な欠乏状態になり糖をエネルギーとして利用できなくなり体内の脂肪が代替エネルギーとして不完全燃焼をおこし、血液中にケトン体というゴミが溜まり血液が酸性に傾き昏睡状態になる。脳浮腫なども引き起こされ生命の危険もあります。
非ケトン性高浸透圧性昏睡(NKHC)
インスリンが出ている糖尿病の場合でも手術、感染症、外傷などのストレスで脱水と高血糖状態が出現する場合もあります。この場合はケトン体は増えることなく血液も中性です。

DKAC NKHC
病因 インスリンの絶対的欠乏 相対的なインスリン欠乏と高浸透圧
検査データ BS400位でも発症、Na, K低値、ケトン体上昇、アシドーシス(+) 著明な高血糖しばしば1000mg/dl以上、高Na血症、ケトン体陰性。アシドーシス(-)
臨床症状 嘔吐、腹痛に始まり、意識混濁、特徴的なクスマル大呼吸 腹部症状やクスマル呼吸(-)、血漿浸透圧上昇
好発患者像 1型糖尿病 2型の高齢者、術後や感染症罹患時

糖尿病性昏睡(低血糖性)
インスリン治療、経口薬治療中に出現
交感神経症状(初期)  イライラ、冷や汗、動悸、めまい、著明な空腹感
中枢神経症状  意識混濁、昏睡

肥満は成人病共通の危険因子


肥満のない人の各病気の危険率を1とした場合の肥満者の危険率は下のようになり糖尿病などは肥満をしている人はしていない人の5倍もなりやすいのです。 image50.gif


肥満している方に多い成人病

高血圧

糖尿病

高脂血症

痛風


脳血管障害

夜間無呼吸症候群

動脈硬化症

心臓病


脂肪肝

胆石

月経異常

膝関節症


肥満と死亡率

その結果、肥満すればするほど相対的な死亡率は上昇し、50%以上の肥満の人は死亡率は肥満していない人の2倍近くにも達します。
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