糖尿病とは一言でいうとどんな病気でしょうか?
名前の通り単に糖が尿に出る病気と思われがちですがそうではありません。 糖尿病とは血液中のブドウ糖が増える高血糖病ともいうべき病気です 具体的には朝ごはん前の血糖値が126mg/dl 以上であれば糖尿病と診断します。後で述べますが、血糖を調節するインスリンというホルモンの作用不足により血糖値があがるのが糖尿病の正体です。 糖尿病には2種類あると聞きましたが? 糖尿病はその原因により1型と2型に分けます。1型というのは若い人に多い免疫の異常でインスリンを出す細胞が破壊されるため起こる糖尿病で、突然インスリンが全く出なくなり血糖がとても高くなるタイプです。糖尿病全体の5%と数は少ないですが、インスリン治療が不可欠で、さもないと昏睡や時には死に至る場合があります。一方、残りの大多数の糖尿病は2型糖尿病で、これが皆さんが普通 イメージされる糖尿病です。生活習慣の悪化が引き金になり、ゆっくりと血糖が上ってくるタイプで、生活習慣の改善や飲み薬による治療が中心となります。
最近よく糖尿病が話題になりますがなぜでしょう ?
最近の統計では日本における糖尿病人口は700万人、予備軍もいれると1400万人ともいわれます。S33年には15万人足らずで、この40年の間にじつに50倍も増えました。これは、社会が豊かになるにつれ、伝統的な低脂肪、低カロリーの和食中心であった食生活が、洋食メニュー中心になってきたこと、外食、特にファストフードやスナック菓子を食べる機会が増え、1日あたりの摂取カロリー量 、特に脂肪の割合が増加したことと、さらに自家用車の登録台数の伸びが示すように運動不足の傾向など、ライフスタイルの変化が原因であると考えられます。 この傾向は日本だけでなく世界中どこでも同じであり、糖尿病はまさに文明病といえます。
糖尿病は新しい病気なのですね?
いえ、糖尿病の歴史はとても古く、古代エジプトの古文書であるパピルスにも糖尿病と思われる病気のことが書いてあります。 また日本でも平安時代の関白藤原道長の伝記によればその症状から彼が糖尿病を患い、これがもとでなくなったと思われます。そのころはめずらしい王侯貴族の病気であった訳です。 糖尿病が増えてきているということは現代はすべてのひとがグルメと運動不足という面 では王侯貴族以上の生活をしているということなのでしょう。 なぜ糖尿病が怖いのですか? 糖尿病になったからといって、つまり血糖値はあがったからといって始めのうちは大した自覚症状はありません。 しかし、それを放置しておくと後でとんでもないしっぺ返しにあいます。 10年〜20年と慢性的に高血糖状態が続くとからだのあちこちに様々な障害が出現します。特に眼、腎臓、神経におこる障害を糖尿病3大合併症、また心臓や脳におこる障害を大血管障害といいます。これら合併症の行き着くところは失明、尿毒症、足の壊そ、そして脳梗塞や心筋梗塞であり、著しく生活の質が低下し、寝たきり状態におちいる危険性が高くなります。 その人個人にとっても大変なこと すが、社会全体としてもその損失は膨大なものです。
血糖は悪者なのですか?
いいえ、血糖は決して悪者ではありません、確かに高血糖が続くと合併症がでますが、血糖は体を動かしたり生きていくうえで一番大切なエネルギー源です。血糖値が下がるとエネルギー不足に陥り、体の活動が低下します。とくに脳細胞は敏感で簡単に昏睡に陥ります。ですから健康な状態では必ず血糖値は60から110mg/dlの間にコントロールされています。
なぜ血糖があがるのですか?
口から入った食物は、胃腸で消化吸収され血液中にすみやかにとりこまれます。でんぷん類はブドウ糖に分解され血液に流れ込みます。 このブドウ糖が体中をまわり筋肉や内臓の細胞に取り込まれてエネルギー源として燃焼する訳です。 ここで問題なのはブドウ糖が細胞の壁を素通 りできないことです。 ブドウ糖が細胞内に入るためにはインスリンというホルモンの助けが必要なのです。 このインスリンの働きが悪くなるとブドウ糖が細胞内に入れなくなり、血液中にブドウ糖がたまり、高血糖が生じるわけです。
インスリンについてもうすこし教えてください
インスリンは、膵臓の中の小さな細胞から分泌されるホルモンです。 食事の時、ブドウ糖が腸から血液中に流れ込んでくるとすかさず分泌されます。 このインスリンが筋肉、肝臓や脂肪細胞の細胞表面 にあるレセプターという部分(これは鍵穴のようなものですが)にひっつくとその間だけ細胞表面 にあるドアが開き、血液中のブドウ糖を細胞内へと運び込む仕掛けになっています。そして筋肉ではブドウ糖を燃やし、一方、肝臓や脂肪ではブドウ糖をグリコーゲンや脂肪として蓄えます。 血液中のブドウ糖は、食直後は速やかに細胞内に取り込まれ、一方、空腹時は肝臓から貯めてあるブドウ糖が放出されるので、健康な状態では血糖値はいつでもほぼ100mg/dlと一定になっています。
なぜ、インスリンの作用不足がおこるのでしょうか?
インスリンの作用不足には2つの意味があります。ひとつは膵臓に問題がありインスリンの出が悪くなる場合。これは遺伝子に異常がある場合が多いと考えられています。もう一つは、肝臓や筋肉に問題がありインスリンの作用が細胞の中へ伝わりにくくなっている場合です。 これをインスリン抵抗性といいます。 これには遺伝子の異常だけでなく、運動不足、肥満、飲酒などの生活習慣の悪さが原因であるとされており、糖尿病が生活習慣病といわれるゆえんです。 多くの場合、始めは、食べ過ぎ、飲み過ぎ、運動不足などにより体脂肪がふえるつまり肥満傾向になるとインスリン抵抗性が出てきます。そうすると膵臓はインスリンの効きの悪くなった分、たくさんインスリンを出して血糖を処理できるよう頑張ります。いくらでもインスリンを出すことができれば血糖はあがることはありませんが、ますます体脂肪が増えて肥満体になり、さらにインスリンの効きが悪くなるという悪循環に入ります。 とうとう膵臓がくたびれてインスリン分泌が追いつかなくなると、血糖値があがりだし糖尿病となるわけです。 日本人は欧米人に比べ膵臓のインスリン分泌能力は弱く、比較的早い時期にインスリンの出が悪くなるようです。これがアメリカ人の様な著しい肥満が日本人に少ない理由のひとつです。 もし日本人がアメリカ人と同じ食生活になると糖尿病の頻度はもっと増えるでしょう。 このことは、アメリカで白人より日系人の方が糖尿病の方が多いことからも十分に予想できます。そして大事なことは血糖値があがり糖尿病と診断されるずいぶん前からすでに糖尿病は始まっているということで、日頃からの摂生が大切なわけです。
2日め 前回の話では、糖尿病、つまり血糖値が高いことが眼、腎臓、神経などに大きな障害を引き起こすということでした。 ところで、先だって、人間ドックを受けたところ血糖値すこし高めで境界型糖尿病といわれました。 ちょっと位 、血糖値が高い程度なら大丈夫しょうか?
会社や市民健診などで境界型糖尿病と指摘され、たいしたことはないとあまり気にされない方も多いのではないかと思いますが、これは大きな間違いです。確かに糖尿病3大合併症は血糖が高くならないと起こらないわけですが、最近の調査で動脈硬化症はどうも違うようで、軽症糖尿病といわれる状態でも進行することが明らかになりました。ですから安心はできません。 なぜ軽症糖尿病でも動脈硬化はすすむのでしょうか 軽症糖尿病の場合は、それ単独だけではなく軽い高血圧や中性脂肪やコレステロールが高い場合、そして肥満がある場合などいわゆる生活習慣病がワンセットになっていることが多いのです。 このような一連の病気が存在すると動脈硬化症の大きな危険因子になります。 なかでも軽症糖尿病、上半身の肥満、高中性脂肪血症、高血圧を死の四重奏と呼びます。この組み合わせがどのくらい危険かといいますと、心筋梗塞を起こした人を10年遡って調べてみると、肥満、軽症糖尿病、高血圧、中性脂肪の危険因子を1つでも持っている方は、それら危険因子のない人に比べ5倍心筋梗塞を起こしやすく、 また3個以上の危険因子を持つ場合はなんと31倍も危険率が高いということでした。 なぜこの悪い仲間である危険因子があつまるのでしょうか? これら一連の危険因子はそれぞれ氷山の一角であり、水面 下では共通の原因でつながっていると考えられます。 この共通の原因というのが実はおなかの中につく脂肪が多い内臓肥満が引き起こす、インスリン抵抗性であると言われています。からだの脂肪細胞はいままでエネルギーを貯める場所とおもわれていましたが、実は、インスリンの働きを邪魔するホルモンや食欲を抑えるホルモンをだす細胞であることが最近の研究でわかってきました。
インスリンについておしえてください
インスリンは膵臓からでるホルモンです。 インスリンは血液中のブドウ糖を細胞でエネルギーとして燃やすのに必要なホルモンでこの作用が不足すると血糖があがり、糖尿病となるわけですが、またそれ以外にも 脂肪を作ったり血圧の調節にも関係していると考えられています。 インスリンの働きが悪くなると、 血糖がそんなに高くならなくても動脈の壁にコレステロールがたまったり、血管壁の細胞の増殖が始まり血管の内腔が狭くなり詰まってしまう訳です。ですから軽症糖尿病であっても決して油断しないようにしなければいけません、 ドックの結果 を見直して、中性脂肪や血圧に異常がないかをチェックしてください、1たつ1は2じゃなくて5にも10にもなります。
3日め 糖尿病はよく遺伝するとかいいますがどうなのでしょうか?
糖尿病は生活習慣病であるとよくいわれますが、糖尿病を引き起こす最大の因子は遺伝子の異常であると考えられています。 糖尿病を遺伝子をもたない場合は生活習慣が悪くても糖尿病にはならないと思われます。残念ながらどこにその遺伝子があるのか、いくつかの候補はあがっていますが、現時点ではまだはっきりとわかっていません。 ただ思いの外その遺伝子をもっておるひとは多いようです。 親、兄弟に糖尿病がなければ安心でしょうか? いえ、糖尿病を引き起こす遺伝子は1つではなく、メインの遺伝子のほかにサブの遺伝子など数個あると考えられています。これら遺伝子の組み合わせで軽い糖尿病や重症の糖尿病になることが決まると考えられています。 たとえば糖尿病が病気として発症するには、糖尿病の遺伝子が4つ必要だとしましょう。 父親と母親はたまたま3つの遺伝子をそれぞれもっていたとします。3つではふたりとも糖尿病はでません。 子供が父親から2つ、母親から3つ遺伝子を受け継いだとします。 そうすると遺伝子が4つ以上になり、その子供は糖尿病がでます。 ですから親に糖尿病がなくても安心はできないわけです。
糖尿病を予知することは可能でしょうか?
現在世界中で精力的に研究されていますので、ここ数年の間にはみつかるかもしれません。 将来的には血液検査ひとつで、その人が、いつごろ、どのくらい不摂生すると糖尿病になってしまうのかが予測できるようになるでしょう。
ひとことで糖尿病を予防するにはどうすればいいのでしょう?
まず一にも二にも膵臓のインスリンを負担を軽くすることが必要です。 言い換えると、食事量 を調節しまた食事内容のバランスを考え入ってくるエネルギーの量を必要最小限にすること、そしてもう一つは運動、特に有酸素運動をして、筋肉や肝臓でのインスリンの効果 を高めてやり、とにかく膵臓からのインスリン分泌量を節約することです。 最近はマスコミなどでじつに多くの糖尿病によい食品などが紹介されます。 しかし、どうも良い面 だけを強調しすぎる傾向にあります。 良いものでもとりすぎは健康を害しますので、バランスをかんがえてください。 やはり、低脂肪、高繊維食ということになり、伝統的な日本食ということになります。 ただ和食は塩分が多いので、高血圧がなくても薄味にしてください。 実は塩分には食欲増進作用があるのです。 また、早食いはいけません、しっかりあごを動かしてかむと脳の中にヒスタミンという物質ができて満腹中枢を刺激して満腹感がでやすいです。30回をめざしましょう。またしっかり朝ご飯をたべましょう。 一方、夜食もいけませんね、よるは交感神経の活動が低下しますので、お昼より食べたエネルギーが燃えにくいので体に脂肪がつきやすいですよ。食事はゆっくり腹8分目と1日1万歩です。
投稿者 by 院長