糖尿病はなぜ起こる?

糖尿病の病因について 1.糖尿病の危険因子

糖尿病(2型糖尿病)はなぜおこるのでしょうか? このコーナーではその原因について考えてみましょう。
糖尿病の危険因子 あなたはいくつ危険因子をもっていますか?
糖尿病の危険因子には、下の図に示すような肥満、運動不足、過食、ストレスなどがあげられます。しかし世の中には同じように不摂生な生活をしていても糖尿病になりやすい人とそうでない人がいます。その差はどこに起因するのでしょうか?
その差を決めているのが遺伝因子なのです。親兄弟など血縁関係の方に糖尿病がおられる方は要注意です。そのような方はすでに最大の糖尿病の危険因子を持っている可能性が高いからです。
危険因子のなかで最大のものは遺伝因子です。
あなたの糖尿病危険度を診断してみましょう。
さて、これらの危険因子はどのように糖尿病を引き起こすのでしょうか?
ひとことでいうと多くの危険因子がインスリンの作用不足を引き起こすのです。そしてインスリンの作用不足には2つの意味合いがあります。ひとつはインスリンの量的不足、つまりインスリンの分泌能力が低下することにより量的な不足状態におちいる場合。 もう一つは、量的には問題ないがインスリン作用が弱まり質的に不足する場合、これをインスリン抵抗性といいます。これはインスリン自体に問題があるというよりも、インスリンが作用する標的の臓器(筋肉細胞、脂肪細胞、肝臓の細胞)レベルに異常が存在することによります。

糖尿病の病因について 2.インスリン分泌不全と抵抗性、グルカゴン過剰

従来糖尿病の病因としてインスリン分泌不全と抵抗性という2つが大きな要因であり単独または相互に関連し糖尿病を発症すると考えられていました。インスリン分泌不全は主に遺伝因子が関与していると考えられ、インスリン抵抗性は過食、運動不足による肥満・内臓脂肪の増加などの環境因子、遺伝因子の両方が関与していると考えられています。 グルカゴンについては25年ほど前には盛んに研究されていましたが最近はあまり注目されなくなっていました。 ここに来てDPP-4阻害薬が登場しグルカゴンの役割が再度脚光をあびています。
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すい臓の中にある小さな細胞の塊、ランゲルハンス氏島と呼びますがここにインスリンを分泌するB細胞とグルカゴンを分泌するA細胞があります。糖尿病ではB細胞からのインスリン分泌が低下し、筋肉や脂肪細胞への血液中のブドウ糖の取り込みが低下し血液中のブドウ糖が過剰になる(=血糖値が上昇)、一方A細胞からでるグルカゴンは相対的に過剰となっています。
グルカゴンは肝臓に働き、肝臓にためているグリコーゲンからブドウ糖を産生し血液中に放出します。 グルカゴンは健康状態では空腹時に分泌され血糖が下がりすぎないように肝臓から糖を放出させ血糖値をささえます。 一方食後は食事から摂取する糖質が血液中に流れ込んでくるので、肝臓からの糖の放出は必要なくグルカゴン分泌は抑えられ肝からの糖の放出をほぼ0となります。 これが糖尿病になると食後にもグルカゴンが出続け、食後の血糖が上昇する一因となります。 ここに大きく関与していると考えられるのがインクレチンホルモンの作用の低下です。

糖尿病の病因について 3.糖毒性

もうひとつ糖尿病の発症を加速する因子に糖毒性というものがあります。高血糖そのものが、インスリン分泌を低下させ、またインスリン抵抗性を増強させることが知られています。それらが、また血糖値を押し上げるという悪循環におちいり糖尿病状態が進んでいきます。

糖尿病の病因について 4.2型糖尿病の自然歴

2型糖尿病の自然歴

肥満タイプの糖尿病
やせタイプの糖尿病
インスリン抵抗性

高インスリン血症 (B細胞の過剰反応)

インスリン分泌不全 (B細胞の疲弊)

糖尿病
インスリン分泌不全

糖尿病
肥満タイプの糖尿病では最初に体質的にインスリン抵抗性が存在するため、代償性にインスリン分泌が亢進しており高インスリン血症を呈します。始めのうちはインスリンはどんどん分泌され見掛け上血糖値は上がりません。しかしある時期からインスリンの分泌能力の限界をこえインスリン分泌が低下しだし血糖値が上昇しはじめ糖尿病となります。 痩せ型の糖尿病では比較的最初からややインスリン分泌が低下しており血糖値が上昇してきます。

1型糖尿病と大きく異なるのは分泌低下がゆるやかなことです。

糖尿病の病因について 5.糖尿病の遺伝子因子

糖尿病を引き起こす遺伝子は一個だけではなくいくつかの遺伝子が作用し合って糖尿病になると考えられます。現在、世界中でその遺伝子群を懸命に探索しています。