動脈は身体の隅々まで酸素と栄養を運ぶための血管のハイウエイです。動脈硬化とはこの大切な動脈の壁が硬く、厚くなり、血液の流れが悪化し最終的には血栓ができて完全につまってしまう病気です。動脈硬化によっておこる病気の代表は、脳梗塞と心筋梗塞、そして足の壊疽です。最近この動脈硬化症がどんどん増えています。 動脈硬化による死亡(脳卒中と心筋梗塞)は30%となり癌を抜いて日本人の死因統計の第一位です。また寝たきりの原因の第1位も脳卒中です。なぜ動脈硬化が起こるのでしょうか?
さて、日本より動脈硬化症の多い国はアメリカです。 50年前にすでに心筋梗塞による死亡率は50%を超えていました。そこでアメリカではどんな人が動脈硬化になりやすいかを調査する研究が始まりました。 その結果、コレステロールが高い人が心筋梗塞になりやすいことが明らかになりました。アメリカ人は昔から乳製品、牛肉、ハンバーガーやポテトフライなどが大好きでコレステロールが高い人が数多くいました。 日本人はそれに比べ野菜、米、魚中心の食生活であったので昔はコレステロールは低かったので動脈硬化は少なかったのです。ちなみにアメリカに移住した日本人の調査では動脈硬化は白人なみでした。現在、日本人のコレステロール摂取量は年々増加しており、数年前にアメリカと並んでしまいました。そしてこれからもどんどん増えそうな勢いです。コレステロールは動脈硬化の最大の危険因子です。幸いなことにコレステロールがよく下がるスタチンという薬が開発され以前に比べずいぶんコントロールできるようになりました。 しかしコレステロールだけを下げてもまだ動脈硬化はなくなりませんでした。コレステロールだけが原因ではないのです。 この50年の間に日本だけでなく世界中で肥満や糖尿病が増加していますが、様々な研究からこの肥満と糖尿病に喫煙や高血圧を加えたものが動脈硬化の重要な危険因子であることがわかりました。 コレステロールの問題は解決しつつあるのに他の危険因子が増えてきたことが動脈硬化のあまり減らない理由です。 さらに最近の調査では軽症の糖尿病や高血圧でも危険因子が複数あると動脈硬化が進行することがわかってきました。 危険因子が1つもない人に比べて先に示した危険因子が3つ以上ある場合は動脈硬化症は30倍以上も進みやすいのです。 さて、この危険因子は偶然重なっただけなのでしょうか? 調べてみるとこれら危険因子には共通の原因があることがわかりました。それが内臓脂肪です。