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経口糖尿病薬7)SGLT-2阻害薬

SGLT−2阻害薬

SGLT(ナトリウムイオン・ブドウ糖共役輸送担体)とは、腎臓でブドウ糖を体に再吸収する役割を持っている糖輸送担体(糖の運び屋。ブドウ糖が細胞に適切に取り込まれるために働く分子)です。腎臓の働きは血液中の老廃物をろ過し尿として体の外に毒素や老廃物を捨てる役割がありますが、実は血液中のブドウ糖は、尿が作られるときに一緒にろ過されます。その量は1日180gと言われています。しかしブドウ糖だけはそのまま尿として捨てられるのではなく、そのほとんどが腎臓の尿細管でもう一度血液中に戻されます。この尿細管でのブドウ糖の再吸収を行っているのがSGLTです。 健康な状態では尿中にブドウ糖は検出されません。ところが、血糖値が高くなるとこのSGLTの再吸収する量が追いつかなくなり、尿中にブドウ糖が出てきます。糖尿病という名称は、尿にブドウ糖が検出されることに由来しています。 SGLT2阻害薬はSGLTのこの働きを阻止することで、ブドウ糖を体に再吸収させることなく、尿を通して体外へ排出させる薬剤です。 まさに逆転の発想、尿と一緒にブドウ糖を排出すれば、血液中のブドウ糖濃度が低くなるのですから、薬を使って、どんどんブドウ糖を体外に排出させようというのがこの薬のコンセプトです。これは、今までの薬剤と全く違いインスリンの作用に関係なく血糖値を下げる薬です。 SGLTには2種類ありそのうちのSGLT2の働きをだけをこの薬剤は抑えるので、実際は100%再吸収が阻害されるのではなく、2/3は再吸収され、約60gが尿に排泄されます。 60gのブドウ糖は240キロカロリーになり、500mlの清涼飲料水の糖分1本分プラスアルファ程度のカロリーです。

この薬剤でどのくらいの血糖値を改善する効果があるのか、どのような副作用があるのか、どんな糖尿病薬との組み合わせがよいのか、どんなタイプの糖尿病で効果があるのか、まだまだこれからです

治験の結果からみてみると、期待される効果と懸念される副作用は以下の通りです

期待される点

血糖改善効果: 単独でも他の糖尿病薬との併用でもHbA1cで1%近く下がるようです。

低血糖を起こさない: 単独で使用する場合は低血糖はおこさないと思います SU薬やインスリンとの併用時にはもちろん気を付ける必要があります。

体重減少効果: 特に肥満傾向にあるかたではその効果が顕著のようです。 体重減少を伴う糖尿病薬はありませんでした。 これは画期的です ただし治験に参加された先生方に聞くと治験期間が終了後体重はもとにもどったという意見が多かったようです。

懸念される副作用:

尿路感染症・性器感染症: 尿に常に糖が排泄されているので、やはり膀胱炎など尿路系の感染症が多くなります。海外での報告ではその発現率は10%以上ですが、日本のデータは2%と低いものです。 日本人は欧米人より入浴習慣があるからもしれません。 男女でみると女性に多く見られます。 また女性の場合は性器感染症もあるようです。また陰部掻痒症なども報告されています。

脱水: 尿量が増えるため脱水傾向があるようで夏には水分補給に心がけるなど注意が必要でしょう

ケトーシス:また糖が排泄されるため脂肪が燃焼、これは脂肪組織が減るという良い面がある反面 脂肪分解によりケトン体が産生、インスリンが不足した状態が重なるとケトアシドーシスなどの重篤な合併症を引き起こす可能性もあります。

筋量低下: また60gのブドウ糖が排泄されるためエネルギー不足となり、脂肪が燃焼すればいいのですが、しばしば筋肉に備蓄している筋肉を分解しアミノ酸を産生、これを肝臓でブドウ糖産生に使われる結果、筋肉量が減る可能性もあります 高齢者では特に筋肉が減少傾向にあり注意しないと行けません。

この薬のよく適応となりそうな患者さん像

中年の肥満の男性、食生活が不規則でなかなか減らすことができていない、体重が減らない男性でしょうか?

逆に処方しないほうが良い患者さん やせ型の高齢者糖尿病でしょう 脱水になりかかっても口渇など出にくいこともあり特に夏場は熱中症も最近多くなっているので要注意です

発売、または発売予定のSGLT-2阻害薬

イプラグリフロジン(スーグラ)

ダパグリフロジン (フォシーガ)

ルセオグリフロジン(ルセフィ)

トホグリグロジン (アプルウェイ・デベルザ)

カナフログリジン