米国で行われた1型糖尿病患者を対象にした血糖コントロールと合併症進展に関する大規模スタディ
対象は糖尿病早期腎症を有しない1型糖尿病患者1441 例を対象に1日1-2回のインスリンを投与する従来療法群と,1日3回以上のインスリン注射を施行する強化療法群に分け,平均6.5年間の観察期間中における糖尿病血管合併症の発症・進展の程度を調査しました。
結果は、強化療法群(HbA1c7%以下)は従来療法群(HbA1c9%)の発症危険率を76%低下、網膜症の悪化は54% 抑制、早期腎症の発症を39%,顕性腎症の発症を54% ,神経障害の発症を60% それぞれ抑制できました。そして血糖コントロールを正常に近づければ近づけるほど合併症が低減されることが明らかになりました。一方,大血管症(心筋梗塞、脳梗塞)については残念ながら両群に差は認められなかったという結果でした。
それに引き続くEDICでは,1341例を対象とし、DCCT 時に従来療法であったものも強化療法に切り替え、さらに数年治療を継続,合併症の進展度を当初より強化療法群と対比しながら追跡調査しました。
11年後の試験終了時で両群聞の平均HbAlc 値はそれぞれ8% と差はなくなっていました,早期からの強化療法による腎症、網膜症、神経障害の合併症の抑制効果が持続しただけでなく、当初差がなかった大血管障害の発症(非致死性心筋梗塞,または脳卒中,心血管死など)リスクは従来療法群に比し42%も抑制されていました。 糖尿病早期にしっかり、厳格に血糖をコントロールすることが腎症、網膜症の発症をその後も抑制し、また長期にわたり大血管障害のリスクを抑えることにつながることが明らかになりました。
UKPDSでも同じような効果が認められており これらをレガシーエフェクト(遺産効果)、メタボリックメモリー(代謝記憶)と呼ぶようになりました。